たからもの

 酷く寂しい。心の何処かが埋まらない。
 ――ああ。ひなが居ないからだ。俺はやっと気が付く。
 ひな、ひな。きみは、どこに居るんだ。俺はいつもの道を歩く。辿り着いたのは、白い鳥籠の部屋だ。布団の上に横たわっている。
 俺は彼女を抱き締める。俺が居ると、ひなはあまり喋らない。頭の中の言葉を俺が奪ってしまっているかのように、代わりにこの子は黙ってしまう。
 きみの憧れた者たちを投影した人形を宝箱に仕舞っておくみたいに、俺もきみを仕舞っておきたい。どこにも行かないでほしい。そんな感情ばかりが浮かんでいく。
「なあ、ひな。俺の前から居なくならないでくれよ」
 俺は懇願するように言う。ひなは、はっとした表情で俺を見る。
「……きみ、俺の心を見ちまったのかい」
 俺は問う。ひなは答えない。
 狡いよなあ。俺はきみの深いところにある気持ちには気づけても、今目の前にいるきみは全然分からないんだ。
 ひなは、肯定するでも否定するでもなく、先程の言葉に返すように、ゆっくりと口を開いた。
「……鶴が、私を置いていくくせに」
 そう呟いて、ひなはぽろぽろと泣き始めた。きっと俺の感情を受け取ってしまったんだろう。
 そのまま苦しんでくれ。分かってくれ。俺以外を思わないでくれ。そんな酷い気持ちに駆られた。
 遠くで朝を告げる音が鳴っている。それでもしばらく、この子を離してやれそうにはなかった。

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