充実したきらめき

 また旅行のことを思い出して、少し寂しくなる。はじめましての人と行ってきたにもかかわらず、あんなにも楽しかったのだ。
「いつもの休みは疲れて寝ているだけだから、一瞬で過ぎてしまうけれど、あの日は時間がないのに時間がいっぱいある感じで、とっても充実してた。……不思議」
 私がそう言うと、鶴は笑った。
「それは良かった」
 鶴は言う。
「見たこともない景色、今まで出会ったことのない人間。きみにとっての非日常が、きらきらした驚きに満ち溢れていたんだろう」
 彼は続けた。
「退屈は人の心を殺す。きみはいつも死んだように眠っているから、心配だったんだ。きみはもっとこういう体験が必要なのかもなあ」
 鶴は私の頭を撫でる。そうして、小さなひよこのぬいぐるみと、鶴丸国永を模した小さな鳥のぬいぐるみを指して言った。
「次はそのひよこたちだけでなく、俺も連れて行ってくれよ?」
「……善処する」

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