都会の街並みが広がっていた。都会、と言ってもビル街ではなく、アニメで見たような住宅街だ。ドが付かないまでもない田舎の街並みでも、こんなに立派なものはない。電車の路線があって、アパートがいくつもある。坂道が多く、自転車での移動は大変そうだ。この前の旅行で訪れた神戸の街並みに少し似ているかもしれない。
私の目の前には鶴丸国永がいた。戦装束を身に纏って、私の前に立っていた。私達以外の人影はどこにもいなかった。
彼は私の手を引いて、何処かへ向かう。行き先は検討もつかない。
「どこへ行くの」
そう問うても、彼は答えてはくれなかった。
行き先は劇場。演者の諸事情で見ることができなくなったミュージカルの舞台によく似ていた。ここもまた人影はなく、閑散としていた。
最小限、ステージを照らすスポットライト以外は何もない、がらんどうな舞台。まるでこれから小学生のピアノの演奏会でもあるような光の当て方だった。当然、階段ステージは奥に引っ込めてあった。
鶴丸国永は私の手を引いて、客席からステージへと繋がる通路を歩いていく。少し小走りな速さだった。だけれども、焦っている様子は全く無かった。
演者は誰もいない。観客もいない。私と彼だけがステージにいた。
私は周りに目もくれずに、鶴丸国永だけを見ていた。ここで何かやり取りをしたはずなのだけれど、キスされたあとのことはすっかり忘れてしまった。