本棚

 ひなが泣いている。近頃はあまり泣いていなかったように思うんだが、心が折れたと言わんばかりに泣いていた。
 俺に嫌われるのが怖いと、ひなは言っていた。好いた相手が同じように自分を好いてくれるとは思えない。ひなはずっとそう考えている。まるで呪いのようだ。幼い頃に何かあったというのは知っている。記憶の本棚を共有する俺たちにとって、ひなの記憶はそのほとんどが俺のものでもあるからだ。それでもひなに教えて貰えないと分からないことも沢山ある。ひなが自分で読まないように――思い出さないようにしているんだろう。
 それにしても、ひなに怯えられているのは面白くない。どうしたら伝わるんだろうか。俺にはきみだけなのに。

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