いつもの戦装束でも、内番服や軽装でもない。現代服に身を包んだ鶴は、慣れた手付きでカップに紅茶を注いだ。
「ひなは何杯入れたい?」
彼は私に砂糖の量を確認した。私は二つ、角砂糖を入れた。
「俺は甘いほうが好きだなあ」
鶴はそう言って、砂糖とミルクを多めに入れていく。
「これが溶けていくのを見るのが好きなんだ」
鶴はティースプーンで紅茶をかき混ぜた。
「……こうして、きみと、普通に食事がしたい」
鶴は寂しそうにぽつりと呟いた。
「普段通りに出かけて、美味しいものを共有して、いつもはあまり興味のない邦画を見て、こんなのも悪くないと語り合って……帰ってきて疲れて一緒に寝て。二人で料理をして失敗したときは笑い合って、上手くできたときは褒め合って」
鶴は、砂糖を溶かす手を止めた。
「そんな、きみの当たり前の日常の一部になりたい」
彼は私を真っ直ぐ見つめた。いつになく寂しそうに微笑む彼に、私は息が詰まる。
「……それは、」
「うん。叶わない夢、だよなあ」
彼は笑う。
空間が崩れる。洋風のテーブルも、椅子も、テーブルの上のものも全てが地面に倒れて吸い込まれていく。気付いたら、いつもの鳥籠の部屋だった。私は鶴に押し倒されるような形でベッドの上にいる。彼はいつもの戦装束を身に纏っていた。
「きみが本当におかしくなって、
鶴は言う。
「……きみがもし死んでしまったら、俺はきみと、ずっと一緒に居られるんだろうか」
鶴は呟く。私は胸の奥が苦しくて、彼に抱かれながら、ただただ泣いていた。