雛だった頃の夢

 ひなに抱かれる夢を見た。
 その世界で俺は小さい子どものような姿をしていた。ひなとは敵対関係にあったようで、最初はひなと不仲設定の母親――実際のひなの母親とは全く異なる姿をしている――をけしかけて異形にし、襲わせていた。母親はいくつもの刀や刃物の類を操る異形だったが、他の化け物を見ると、グロテスク、と言うのか、現代の春画のような卑猥な形をしているものが多かった。
 ひなは、俺たちと敵対する組織の人間の指示に従い、闘い、母親を元に戻した。
 その展開になるということは、俺はその世界で負けたということになる。夢は何が起こるか分からない。俺も先が読めない。だから、ひなが、敵対関係にあるはずの、敗北で呆然と立ち尽くす俺を抱き締めるなんて、考えられなかった。
 ひなの手は少し震えていた。敵である俺に殺されるかもしれないと思ったからだろう。その世界では俺たちの記憶はあるようで無い。しかし、ひなは俺を気にかけてくれた。後々聞くと、もしかしたら仲間になってくれるかもしれないと思ったと言っていた。だからあれは、ひなの本能的な行動なのだろう。
 幼い俺を抱くひなは、暖かかった。母親のぬくもりを知らない俺に、それに似た暖かさを教えるように抱くひなが、酷く心地よかった。

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