住んでいる地域で、哲学兵装を身に纏い歌いながら戦う少女たちが出動していた。彼女らの力とイメージカラーに応じた神々の龍が力を貸そうとしてくれていたが、別の神々の龍が襲いかかってきた。
私はその光景を間近で見ていた。オレンジ髪の主人公の少女が、私を助けてくれた。
神々の龍は暴れていた。
そのうちの一体。比較的弱いけれど、一番驚異になる黒き龍の子。
それでも人間の私にとっては脅威だ。私はどうしていいか分からなかった。
足がすくんで動けないでいると、突然、別の誰かに腕を掴まれた。大倶利伽羅さんだった。
「えっ、何処に行くの!?」
そう言ったけれど、返事は無い。大倶利伽羅さんは私をそのまま連れ出した。
大倶利伽羅さんに無茶振りされながらも――とはいえ刀剣男士の神様的な不思議な力で手伝ってくれた――学校の高いフェンスを飛び越えて、とある場所に辿り着いた。学校より繋がる不思議な、本丸のような場所。大倶利伽羅さんだけがそこに居た。
最初は仲良く出来ないかもと怯えていたけれど、黙々と畑当番をこなしてくれていた。私も手伝おうとしたけれど、逆に手伝われてしまった。
気付いたら、燭台切光忠さんや太鼓鐘貞宗こと貞ちゃんも増えていた。光忠さんは大倶利伽羅さんの手伝いをしてくれていた。大倶利伽羅さんは、
「馴れ合うつもりはない」
と、お馴染みの台詞を言いながらも、黙々と内番に取り組んでいた。
ある日、この本丸の鶴丸国永――鶴が長期任務から帰ってきた。この夢では、私と鶴は新婚らしい。私は何も疑問に思わなかった。
「良い子にしていたかい?」
そう言って鶴は私を抱き締めた。
――うわ、好き。
好きすぎて思考停止するのは現実と変わらないようだ。
どういう流れだったかは覚えていないけれど、私は内番などを終えた四振りと並んで庭から屋内に戻っていた。この本丸みたいな場所は学校の近くから出入りできるからか、家屋は現代の日本風だった。空き家を使っているような感じで、前の住人が使っていたものが半分くらい放置されていて、片付けに困っている様子だった。そのせいか、中は少し狭い。
家屋に戻る道すがら、
「そういえば鶴さんと新婚なんだよな?」
と、貞ちゃんに聞かれた。その流れで結婚式の話になった。
「あーあ。結婚式、見に行きたかったぜ」
貞ちゃんは言う。
すると、鶴が突然私に右を差し伸べてきた。エスコートしてくれるみたいな手の差し伸べ方だ。私は何故か左手を重ねた。
そのまま、鶴は私と向き合い、左手の薬指にキスをした。私は何が起こったか分からず思考がフリーズした。
「こうやって誓い合ったんだよな?」
更に鶴はそう言って今度は人差し指にキスした。唇を薄ら開いて舌の先を押し付ける感じのそれだ。これは位置もはっきり覚えていて、第二関節から第三関節あたりのところだった。
一度目のキスで既にフリーズした思考が更にショートした。顔が熱くなるのを感じる。手を離されてすぐ、私は顔を覆ってしまった。「うわ、すき……」とうわ言のように呟いていた気がする。鶴はそんな私の様子を楽しそうに見ていて、今度は私の右手を左手で軽く握って歩きだした。
「おっと。嫁さん、固まってるぜ」
貞ちゃんが言う。
「……好きすぎてどうしたらいいかわかんない」
私は感情の整理ができずに少し泣きそうになりながら言った。人間というのは大きな感情が湧いてしまうと処理に困って泣き出してしまうらしいことは、よく知っていた。
「いつもしてるのにまだ慣れないのかい? 可愛いなあ」
鶴は楽しそうだった。
鶴が帰ってきてしばらくが経った。その日は光忠さんの作ったカレーの日だった。光忠さんも大倶利伽羅さんも貞ちゃんも、用事があって出掛けている。鶴と二人でカレーを食べようとしていた。鶴は白いパーカーと黒いジャージというラフな格好だった。
準備をしながら、彼の後ろ姿を見る。
「鶴、少し太った?」
帰ってきたばかりのときより少し背中が広く感じた。鶴は、
「光坊の料理が美味しくて、つい……な」
と、照れながら言った。確かに、と心の中で同意した。
やっぱりどこの私も料理は苦手らしい。この夢の私も例外ではない。でもちょっとだけ、光忠さんの料理を手伝っている記憶はあったから不思議だ。
またある日。私たちのもとに、一件の任務依頼が舞い込んできた。
どう見ても某放送局のホールだ。どうやら戦姫の龍に関するものらしい。
その任務内容がおかしいものだった。鶴とインド人歌手が何故同じ舞台に立っているのか。私も会場で警備員という名の観客として楽しんだけれど本当に訳がわからない。他の三振りも現地でそれぞれ警備をしていた。
がらんどうになったホールに、突然、龍が現れた。黒い小さな龍だ。
そこで一度、記憶が途切れた。
私は四時四十五という早い時間に目覚めて、それをこの日誌に記録に残していた。早く書かないと忘れてしまう。現実により近い状態の私の話だ。鶴との貴重な交流経験だ。早く書かないと。でも眠い。
気付いたら五時半になりそうだった。
「随分と面白そうな夢だなあ」
鶴が笑っていた。ハッキリと声が耳元で聞こえた。
――それもまた、夢だったようで、実際に目覚めた時間は五時だった。