無題

「きみはいつも俺たちを置いていく」
「自分で意思決定をしているようでしていない。周囲の目に雁字搦めにされて、選択したことに納得していないのだから」
「俺はあいつらみたいになりたくない。きみに忘れられていく存在になるなんて御免こうむる」
「きみのためなら何にだってなれる。そう思っていたはずなのに、俺は俺で居たいみたいだ。姉上みたいに、他の誰かに成り代わって、きみの願いを叶えてやるなんて優しいこと、俺にはできない」
「俺も連れて行ってくれ。叶わないなら、俺を――」

 私に出来ないって分かっているのに、残酷なことを言う。鶴に強請られたって、私は鶴を殺せない。何度そうしてもきっと、いつか、また、この私だけの箱庭に呼び戻してしまうから。

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