ぼやけて見える

 仕事で嫌なことがあった。半分は私のせい、半分は同僚の伝達不足と客の確認不足。ここのところ失敗ばかりで、本当に嫌になる。
 記憶の反芻は止まらなくて、夜中に目が覚めてしまった。嫌だ。逃げ出してしまいたかった。逃げるなんてできないから、目を瞑って意識が沈むのを待った。でも、いくら待てども眠ることはできない。
「……寝ないのか?」
 鶴の声が聞こえた。夢の世界も暗くて何も見えない。
「また嫌なことでもあったのかい?」
「うん。とても」
 彼の言葉に短く返す。
「……明日も早いんだろう?」
「うん……」
「現実なんて忘れてしまえ。もっと楽しいことを考えよう。ほら……目を瞑って」
 彼はそう言って私の視界をさらに覆い隠した。

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