夢日記

 夢を見た。何度か繰り返し見ているような内容の夢だ。
 既に就職している身だというのに、何故か大学に通っている。そこで私は、とある社会学系の科目をギリギリまでサボっている。本来ならば有り得ないことだが、成績がいいという理由で卒業よりも先に職に就き、働きに出ることが許されていた。単位は必須分しか取っていないため、その科目を落とすと卒業できなくなり、解雇される。しかしながら私はどうにもその科目を軽視していて、遅刻や何か家の事情などで講義の参加をボイコットしてしまう、というのがお約束のような流れだった。
 ゼミの単位が関わってきたり、仕事を辞めてまた進学をしようとしたりと、話の細部は日によって違う。
 今日見たのは、同じような内容ではあるが、少し違った。飛び級で大学に通っていて、でも高校の授業も受けている、という内容だった。今度は大学の単位ではなく、高校の卒業要件が危ない、という内容だった。高校を卒業できないと、同時に通っている大学を辞めることになり、内定が決まっているのにそれが取り消されてしまう。そしてその卒業要件を危うくしている原因が、社会学系の学問だった。



「またおかしな夢を見たんだなあ」
 ひなが語った夢の話を聞いて、俺は笑った。彼女の見る夢では、度々学生時代の記憶がおかしな形で再現される。そりゃあそうだわな、と俺は思う。夢は記憶の整理を行うための場所だ。記憶の本棚に刻まれたひなのそれが、継ぎ接ぎだらけのおかしな話として再現されてもおかしくはない。
「俺も見てみたかったぜ」
「見ても楽しくないよ。ドロップアウトする私が見れるだけ」
 ひなは慎重だ。神経質、心配性、臆病とも言う。だから、物事を理性的に考えられる局面では、自分が困るようなことはしない。
「でも、きみがあえて遅刻して休む、ってことは、『それでもなんとか取り戻せる』って分かってるってことだろう?」
 俺の言葉に、ひなは、
「うーん……そうなのかなあ」
と、首を傾げた。彼女は自分のことを分かっているようで分かっていないなあと思い、笑った。ひなも知らないひなを、俺はちゃあんと見ているからな。 

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