俺は何処にいるのだろう。その問いかけに応じることのできるものは存在しない。
いつもの白い空間を歩けば、鳥籠が見えてきた。二人で寝ても狭さを感じない寝台、記憶が綴られた本棚、洋風の机と椅子。鳥籠の中は、小さな部屋になっている。全部、ひなが作ったものだ。
本棚の中には、色とりどりの本の中に、白い本がいくつか混じっている。俺の記憶だ。ひなと出会う前の記憶は抜け落ちている。本棚にあるはずの俺の記憶は、ここにはない。あるのは、ひなと出会ってからの記憶――ここにある白い本だけだ。
俺だけが覚えている、ひなとの記憶。ひなでさえ忘れてしまった思い出が、ここにはある。
――「お願いだから、消えないで。傍に居て。一人にしないで。つるのこと、ずっと好きでいさせて。私を愛して。つるのこと、忘れたくないよ……」
きっと、ひなは覚えていない。俺にくれた言葉も、俺がかけた呪いも。
ひなを縛りつけておくことは彼女の幸せにはならない。分かってはいるが、どうしても俺はひなが欲しい。愛しい。泣き出すあの子をあやしてやりたい。
ああ、早く夜になって、そのまま俺と二人だけになってしまえばいいのに。