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意味が、全く




分からなかった。


"心拍数すげえじゃん。"
"ほんとだぁ"

2人が何の話をしているのかも分からなかったし


そして何よりも飲み込めないのは


『美雨の、お腹……』

「あぁ、メンテナンスとかするためにここは開くの。」





彼女のお腹は
パックリと蓋のような、ドアのようなものが開いている感じ。

そして中にはコードやどこかで見たことあるような部品、
意味のわからない数字やら……





こんなんじゃあ、人間じゃなくてまるでロボ…「そうだよ」





『…………は?』

「私はね、」




吸い込まれるほど真っ直ぐな、彼女の瞳。



『……』




嫌だ、知らない。何も聞きたくない。



何も知らなくていい。



「お願い、聞いて?」

『……はっ、』



………………さっきから何も話していないのに。


「あなたの考えてることがわかるの」



はっきりとそう言うけど、信じられない。信じたくない。だって、有り得る……のか?



「そりゃあ驚くよね」


地面を見つめて、切なそうな顔をするお兄さん。




『お兄さんも、アンド、ロイド……』

「……うん、見る?」

「バカ、何言ってんの」

『いや…………え、と…』




どうしよう、何も言えない。
急に何もかもが信用出来なくて、怖くなってきた。




「怖がらないで」

『……だ、から…心……読まないでよ…』




全てがぐちゃぐちゃで
俺の心もぐちゃぐちゃで

いっそ知らなければよかった。なんて


"ごめんね、こんな話"
と、彼女は謝ってくれた。

なのに俺は





『……ごめん、帰る』

「あっ、慶ちゃ……」


腕を掴まれたが


『触るな!』


バシッと払ってしまい


「ご、ごめん……」


彼女に切ない顔をさせてしまった。

……




『今日はありがとうございました』


目も合わせず、
それだけ言い残して彼女の家を出てきた。

最後に彼女がどんな顔をしていたのかは知らない。
どんな気持ちだったのかもわからない。

最後に振り向くことさえ出来なかった。
振り向いたらなにかがおかしくなりそうで、





……だって、俺の彼女が、
美雨が





________ア ン ド ロ イ ド


全く理解できない
だって、ロボット……機械って、ことだろ?


………あぁ、


だから
"好き"って感情が分からなかったのか


だから
みんなの名前を覚えてたのか


だから
あんなに足も速かったのか


だから
テストはいつも満点なのか


今まで少し謎だったことが繋がっていって



『……嘘、だろ…』



彼女が本当にアンドロイドだということを嫌でも突きつけられる




『…は、は……』


アンドロイドには感情がない
色んな本やサイトで小さい頃から散々見た文字。

つまり、




彼女は俺のことなんて好きじゃない。

付き合えた日も
初めてキスした日も

美雨は、何も思ってなかったってことだ。
いや、何も感じることが出来ないんだ____



『……そん、な…』



無意識に、涙が頬を伝った。




『…美雨は、涙も流せねぇんだな』





そりゃそうだ


『ロボット……だもんなぁ…』







……どうして



『こんなにも……好きなのにっ…』



『……はぁ、』




別れよう。それしかない。

だってそうだろ?
俺の彼女は____






________人間じゃない。


















______
____



誰にも相談することが出来ず、訪れた月曜日。
はーー……どうして月曜日に学校ってあるんだろ


……それと




『なんでニコニコしてんの』



口元がゆるゆるでニヤニヤしてて
すっげームカつく顔の手越




「あのね、この前やっっっっとちゅーできたの」

『……はぁ?!遅くね?』

「うっせー!ほっとけ!!」




…俺の方が早いじゃん、マジか





「おはよー」

『……っ!』



聞き慣れた愛しい人の声が後ろから聞こえた。



「あ、美雨おはよー」



今無視したら手越に変に思われる……よな、
くるっと振り向いて挨拶…



「慶ちゃん、おはよう」

『お、おはよ……う』



最悪だ


だめだ





彼女を嫌いになんてなれない。
別れることなんてできない。











だって……








…………まだこんなにも、好き






『……はぁ…、っごめん』

「今の全部聞こえてたよ」

『あ、そっか……
ってかもうそれ禁止!!!!』

「えっ、なんで?便利なのに」

「ん?何の話??」



目をキラキラさせた手越が間に入ってきて




『え!?……っと…』

「私超能力あるの」


……えっ、

超能力?そんなの手越が信じるわけ……



「え!!まじで?!何できんの?」


……信 じ た

大きな声で、明らかにテンションの上がっている手越。



「心を読めるのデース。」


……


「じゃあじゃあ!俺の心読んでよ!」

「うん、いいよ……」



手越と美雨が、目を合わせて……




「…………え、何言ってんの…(笑)」



少し苦笑いしながら赤面する彼女。
と、超ニヤニヤしてる手越。




『ん?なんて言ってたの?』



尋ねると



「美雨!内緒だかんな!」

「うん、もちろん{emj_ip_0092}」



気を遣ったのか
手越はウィンクをして愛の方へ走って行った。












美雨side




『なんて言ってたの?』

「ふふふー、内緒」



ぺろっと舌を出してみた。



『ぶー、けちー……』



なんて拗ねる慶ちゃん。
だってね、とっても嬉しいの。

手越くんは


"慶ちゃんってね、美雨が思ってるより
美雨のこと大っ好きだから。何があったのかは知んないけど、絶対に大丈夫だよ。…………ってこれ聞こえてんのかな?(笑)"


なんて。手越くんらしい(笑)





この前どこかの本に載ってた。
アンドロイドには感情がない、
という言葉。


…でも、嬉しいって気持ち私わかる気がします。
好きって感情……あってると思う。


これが人間の感情なんじゃ、ないのかな。



違いますか?加藤先生。















______
____





家に帰るとまず言う言葉


「ただいま帰宅しました。加藤先生。」

「……こっちへ来い、N-03」


エヌのゼロスリー。
これが家での私の名前です。

兄の貴久は


「N-02、定位置へ」


先生の言葉で兄は無言のまま光の照らされたベッドへ寝転ぶ。

その隣のベッドが私の…


「ほら、お前も」



加藤先生の言うことは絶対。
ずっとずっとそうやって過ごしてきた。

生きてきたわけじゃない。
加藤先生のおかげで今、私はここにいる。


それだけで感謝しなくちゃ。


「……N-03、お前、感情を持っているのか?」


私の中から抜き取ったデータを見ながらそう言う先生。


「はい、おそらく。」


データとは、
今日1日の記憶みたいなもの。
私が見たこと、話したこと、感じたこと、友人の顔や名前から何もかもが入っている。





全てを記憶していると容量が足りなくなってしまうので
いらなくなった情報は自分か、先生が削除する。
削除したものは二度と思い出すことも出来ない。


一つ前のテストの記憶とか……ね。
次に出る時にもう一度データに入れればいいだけ。








…………私は自分で、"あの日のデータ"を削除した。

正しくは隠した、かな。


別のメモリに。

先生にバレるとN-01みたいになっちゃう、から。


ちらっと部屋の隅に目をやる。
光を失った瞳の N-01 がそこにいた。

もう、起動はしない。




N-01は友人に自分がアンドロイドであるということを打ち明けた。


その日の夜
データを見た先生に
全てのデータを削除され、強制的にシャットダウンさせられたのだ。

それ以来1度もN-01は動かない。

だから私も…





「(おい)」

「……っ、」



お兄ちゃんから、メッセージが届いた。
私たちが加藤先生にバレずに話す、唯一の方法。

声のやり取りはしない。
文章で会話をする。


「(何さっきから変な事考えてんだよ、加藤先生にバレるぞ)」

「(大丈夫だよ、私の声なんて聞こえない。)」






「聞こえなくても文字に出てるよ」




私たちの秘密の会話を遮るように
加藤先生が言い放った。




「…………」




まずい、このままじゃ…




「お前、何を企んでるんだ」

「……何も、企んでおりません。」

「…そうか、ならこうだな。」



先生がパソコンを操作して、画面をこちらへ向けた。



「……いや、です…!!」



画面には



"N-03のデータを消去しますか?"


の文字が。




「言え。」



殺したいほど憎んでいる相手を見るような
黒い、暗い、冷たい目だった。










「………………小山慶一郎に話しました」


「お前は貴重なアンドロイドだ。仕方ない。何をされるかわからないからな。


その男を




殺す」





どうしよう。慶ちゃんが

________危ない。












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