1話
物心ついた時にはもう
本当のお父さんも
本当のお兄ちゃんも
本当の弟もいなくって。
代わりと言っちゃあれなんだけど
再婚相手の新しいお父さんにその連れ子の
貴兄と祐也がいた。
「貴兄〜?」
『ん?〇〇どうした?』
「ちょっとうしろ、結んでくれない?」
『あぁ、ちょっと待ってね〜……
はい、できたよ。』
頭をポンポン、って優しい
まあるい笑顔の貴兄は
私の2つ上の義理の兄。
近くの大学に通っている 1年生。
『何朝からイチャついてんの、キモいよたか』
「うるさいよ祐也」
『お前には話しかけてねぇっつーの、黙れ』
「むかつくんだけど!祐也ってばほんとガキ」
『まあまあ二人とも落ち着いて?ねぇ。』
「兄妹は貴兄だけがよかったよ〜、なんで祐也もいるの……」
『うっせーブス お前なんか遅刻しろ』
「お前も同じ学校だよ私が遅刻ならお前も遅刻だ」
『さっきまで祐也だったくせになにお前なんて言っちゃってんの?』
……このくそ憎たらしい義弟は祐也。
1つ下で私と同じ高校に通ってる 1年生。
『〇〇?祐也なんて無視して早く行かなきゃ本当に遅刻するよ?』
「え!ほんとだ、お母さん行ってきます!」
『ちょ、待てよ……』
バタン
やばいやばいやばい!祐也なんかのせいで遅刻するよ〜…
『おい』「…」『おい!』「……」
『〇〇!』
「はい、なに??」
後ろを振り向くと、すっっごい機嫌の悪い祐也の姿。
『後ろ乗れよ』
って自転車の後ろを親指でさす。
「きゃー、なにそれ?ドラマみたい(笑)」
『……よし、置いていく』
「わかりました乗りますごめんなさい義弟よ」
ふっ、と笑ったかと思えば
掴まっとけよ、って私に言って
自転車を漕ぎ出す。
……
「今日も1日頑張っていこー!」
『うっせえ黙れデブ』
「てめぇ帰ったら覚えとけよ」
こんなバタバタした朝から
いつも通りの1日が始まってゆく。
______
____
昼休み
「ねぇ、〇〇なんか呼ばれてるよ」
「えっ、なに〜?」
その子が教室のドアを指さす。
指さす方向には……
「こやまくん!」
『…よっ』
隣のクラスの小山くん。
彼、実は……
私の彼氏{emj_ip_0177}
「ごめんみんな私小山くんとご飯食べてくる!」
友達にそう伝えると
みんな
"あ〜いいよいいよお幸せに{emj_ip_0177}"
なんて言ってくれた。
「どこで食べよっか、小山くん」
『んー……人が少ないところでお願いします』
「じゃあ…中庭かな」
なんだか、今日の小山くん
少し静かで……どうしたんだろう?
中庭に着くなり、私はお弁当を広げて
「ふふー、いただきますっ」
ってパクパク食べ始める。
その間も、彼は黙っていて
「こやまくん?」
『あのさ?〇〇?』
「なーに?」
『なんていうか、その……』
目も合わせずにおろおろする姿に
少し、不安が募って
『…………別れてほしい、っていうか』
「………えっ?」
悪い予感、的中。
『…ごめんね、〇〇は悪くないよ。
……いや、悪いか…?』
「どういうこと…?」
別れよう、って提案してきた割にはなんだか少し様子がおかしい。
「ねぇ、小山くん何かあったの?」
『ごめん、これ以上は何も言えない。
早く俺のことなんか忘れて幸せになってね。』
「ちょっと待ってそんな急に言われても…!」
『……今までありがとうね』
それだけ言い残し
スタスタと歩いていく彼。
わ、たし今……ふられたの?
え?何が起こったの?
……まただ、原因不明で別れを告げられたのは。
どうして?って理由を聞いてもはぐらかされる、
いつもいつもそうだった。
小山くんで、五人目。
「気分が悪いです、早退します
ごめんなさいお母様」
家族には小山くんとのこと言ってないし…
なんか言われるかなぁ……
こんなので授業なんか受けられるわけないもん。
帰ってめいっぱい泣こう、よし。
______
____
「はぁっ……」
自分の部屋に入るなり、ベッドに倒れ込む。
考えるのは、小山くんのことで。
「どうして急に……」
私、何かしたかな?
他に好きな人でもできたのかな?
私のこと…嫌いになっちゃったのかな……
視界が歪んできて
「うぅ……こやまくん…」
枕を滲ませた。
いつの間にか泣き疲れて
眠ってしまったみたいで。
『〇〇?
〇〇、』
「……ん、たかにぃ…」
『……どうしたの、知らない間に帰ってきてるし
制服のまんまで寝てるし』
「…あとではなすぅ……」
『そう?早くご飯食べてお風呂入っちゃいな』
何かを察したのか頭を撫でてくれた貴兄
「……ありがとう」
優しくされると、また涙がこぼれそうになって
「ご飯なに!おなかすいた!!!!」
『だってもう八時だもんね』
「え、寝すぎた」
さっさとご飯を済ましお風呂も入って
テレビでも見て気分を変えようと思ったが
なんか芸能人の不倫とか破局って文字が見えたから
気分が悪くなって
すぐに部屋に戻ってきた。
すると
コンコンコン、とノックされて
貴兄かな、なんて思ったら
『……よう』
「ゆ、うや」
『なぁ、なんで目腫れてんの』
「……寝すぎたの」
『なんで?』
「なんでって、早退したか……」
しまった、そう思った時にはもう遅くて。
『なんで?熱でもあった?』
「いやぁ別にそんな……」
『なんだよ、なんか変だぞ』
「あんたに言ったって笑われるだけだもん
早く出てけ」
『なんだよ、心配してやってんのに』
「してやってるって何よ、誰が頼んだの?
いいからほっといてよ!」
……八つ当たりだ、こんなのは。
『そーですか、ごめんなさいね頼まれてもないのに心配なんかしちゃって。
じゃあなおやすみ』
バタン!
大きい音を立ててドアが閉められる
「……さいっ、あく…」
もう嫌だ、早く寝てしまおう
そう思って目を閉じたのに
まぶたの裏に広がるのはやっぱり
小山くんの姿。
「あーーーーー!もう!!!
もーー!!!!!!!」
『〇〇?』
ドアからひょこっと顔を覗かせたのは
お兄ちゃん
「…あ、ごめんなさい」
『振られたんだって?』
「…………そう」
なんで知ってるんだろう、
兄の勘?
『……小山…慶一郎くんだっけ』
「………う、そう……」
小山……慶一郎くん…
名前を出されると、
またすぐに涙が溢れそうに
『どうして叫んだの?』
「眠れなくて。」
『あー……そうか…』
うーん、と少し考えた末に何か思いついた貴兄。
『……一緒に寝る?』
「え、いいの?」
『いいの?って、〇〇が大丈夫なら俺は大丈夫……だけど…』
祐也がなんか言うかな……
なんて貴兄の言葉を無視して
「寝る!貴兄の部屋!!」
貴兄が先にベッドに入り、
ん、おいで。ってベッドをぽんぽんする。
「ふふ、彼氏みたい(笑)」
『おいおい、兄妹だし。』
兄妹だとわかっていても、少し緊張してしまって
ベッドに入るなり背中を向けてしまう
「……おやすみ…」
『〇〇?』
「ん?」
こっち向けよ
そう言って私の体を反転させて
ぎゅっと、抱きしめる
「たか、にい……」
『大丈夫、大丈夫』
優しく、温かく抱きしめてくれて
今男の人に抱き締められると小山くんを思い出して泣いちゃう。
なんて思ったけれど
貴兄の匂いは小山くんと全然違うし
体つきも全然違うから
思い出さなくて済んだ。
「ありがとう……貴兄」
落ち着くその匂いに安心してすぐ眠ってしまったらしい。
朝気が付くともう既に貴兄はいなくて。
「……今日休みだしもう少し寝よう。」
もう1度、貴兄の匂いに眠りについた。
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