XIII

おそ松さんと年末にいろいろあったけど、両想いだったのがわかった。
それからの一連のことを思い出すと、なんだかにやけてしまう。

そういえば、まだあのパーカー返してなかったなぁ。

とりあえず自分のタンスの引き出しにいれていたそれを取り出してまじまじと見つめる。洗濯しているとはいえ、彼がよく着ているものだと思うと嬉しいやら恥ずかしいやら、愛おしくてたまらなくなる。
「へへ、おそ松さん…」
側からみたら変態だな、服に頬ずりなんかしちゃう。
「好きです…」
ぎゅっとパーカーを抱きしめて、できるだけシワをつけないように広げながらふたたびタンスにしまい込んだ。


実家には明日帰ることにしていた。
そんなに遠くないし大晦日でもよかったけど、帰省ラッシュのピークを避けるのと、占いのとコンビニのバイトを入れたからね。
『えっ。明日実家帰るの??』
受話器の向こうではおそ松さんが残念そうな声を上げていた。
「そうなんです。だからごめんなさい」
おそ松さんから電話がかかってきたのは5分くらい前の話。バイト上がったら遊びに行かない?っていう嬉しいおさそいだったのだけど。
『帰るって、どのくらい?』
「1週間くらいですね・・・」
『ええーっ』
しばらくの沈黙の後、聞こえてきた声は意外と明るかった。
『なあ、明日駅に見送りに行っていい、よな?』
「もちろん!明日、じゃあ、昼2時半に」
『おう!』

電話の赤いボタンをタップして通話を切る。
よく考えたら、おそ松さんに1週間も会えないのだ。そう思うと、一気に寂しさがおそってきた。
「でも、お盆の時以来帰ってないし、お母さんには明日帰るって言ってるし」
そう自分に言い聞かせながら、荷造りに取りかかることにした。
「パーカー、持ってっても、いいかなあ・・・」

翌日、2時半。
おそ松さんが赤塚駅前にあるフジオ像の前に立っているのが見えて嬉しくなって駆けだした。
「よかったあ、会えた!」
にかっ、という擬音が似合うくらいのすてきな笑顔で迎えてくれた。
「おそ松さん、あの、いつだったか、貸していただいたパーカー」
「あー、あれ?いつでもいいよ返すの」
「うん、あの・・・もう少し借りますね。一緒に、おそ松さんの代わりに、帰省させても、いいですか」
「へ?!」
一気に頬に赤みが差して驚いた様子のおそ松さんの顔は、そのままゆっくり笑顔に戻った。
「おん、よろしくな・・・!汚すなよー?」
髪をわしわしと撫でられ、くすぐったくなって思わず止めるようにおそ松さんの手を取った。
「!?」
びくりとその手を止め、重なった私の手の上にもう片方の手を重ねて取った。
「かなたちゃん、じゃあ。気をつけてな」
ちゅ。
それは手の甲に突然降ってきた。恭しく、控えめに、落とされたキス。
「1週間後に、また、ここで」



でもその約束は、果たされなかった。

BACK
ALICE+