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「私、今度のライブ、頑張ります。一松さんのハート、かっさらいに行きますから、覚悟してくださいね!」
「かっさらい…まあ、せいぜい頑張れば。こんなクズのハートなんかクソの役にも立たないから。もう、帰るよ。送る…」

もう、さらわれてるのかもしれない。
路地裏での密会、秘密のやり取り。
ほのかとおれのやり取りは、誰にも言えない秘密。
もしバレたら、ほのかがどうなるかわからない。
恋愛じゃないだけマシ。

…いや、俺は、彼女に恋をしているんだ。
誰にも言えない恋心を、心の中に抱いている。

兄弟に挟まれて眠る布団の中。
彼女になんと返そうかわからなくなってただ、
“おやすみ“
とだけ打った。
そしたら数分経ってまた返ってきた。
『一松さん、今日は定期ライブだったよ
カレンは飛ばしすぎって心配してたけど
明日はお休みもらったから、何かあったらlineください
おやすみなさい』
今日は来ないなと思ってたけど、ライブだったのか。
楽しくて仕方がないという風に歌う彼女の姿を想像……いや、できない。見たことないし。
“ほどほどにしなよ。体大事“
“路地裏いつでもいるし“
“猫も待ってるよ“
あいつらの写真も送ってやろう。
フォルダを開いて、最近撮ったやつを送る。
何枚か送ったところで、おれの写真はないのかときた。
こんなクズの写真なんか欲しいの?
少し嬉しいと思ったおれを殴りたい。
“あるわけない“
“物好きだね“
ほのかは物好きだと思う。
猫じゃなくてこんなおれの写真ほしいなんて。
『物好きだもん(笑)一松さんの写真ほしいな』
本当に物好き…

“ほのかの写真くれたら考える“
“プライベートなやつ“

おれだけのための写真を、ほのかがくれるならと送ったメッセージ。
翌日になって、軽くメイクしているけど、アイドルじゃない、普通の女の子の写真が送られてきた。
そっと保存をタップしてカメラアプリを起動させて、
「チョロ松兄さん」
たまたま部屋にいたチョロ松兄さんに声をかける。兄さんはほのかが招待してくれたライブの予習とやらに余念がない。今も、アンジェリクのCDをききこみ中らしい。
「んー?」
「俺の写真撮ってくれない」
「いーよー…ってええええ?!」
一松頭大丈夫か?!写真とかいいのお前?!
わけがわからないことを叫びながらも、写真を撮ってくれた。
ソファにぎこちなく座ってるおれを。
送信すると、どうやら彼女は今路地裏にいるらしく、
『路地裏きちゃいました!』
『やったあ一松さんだ!ありがとうございます』
ハートマークを飛ばすウサギのスタンプ付きで返ってきた。
“そんなに嬉しいの“
“おれもそっち行くから“

喜ぶ姿を想像すると熱が顔に集まるのがわかった。
ほのかに会いたくなったなんて、言えない。

(一松さん顔赤いですよ?!大丈夫ですか?)
(別に。気のせいでしょ…誰のせいだとおもってんの…)
(なんか言いました?あ、ほら!シャンおいでー)
(…猫とアンタとの組み合わせ可愛すぎ)
(あっ!一松さん今何撮ったんですかー!見せてください?)
(しらないし。見せない)




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