▼ 25.5

「....忘れたいの」



もちろん恐怖だってある
でも、もう狡噛さんは戻って来ない
そんな人をいつまでも追いかけてもしょうがない



「...んっ...くすぐったい...よ...ぁッ...」



首筋を這う舌が熱いのと同時に、耳元に吹きかかる息に変な声が漏れる



「....お前いつこんな事を覚えたんだ」

「1つ年下なだけで、小学生だとでも思ってるの?もう子供じゃないんだよ」

「....まさか経験あるとは言わないだろうな」

「それ伸兄に関係ある?経験あったら何なの?」


極論言えば伸兄だって他人
私の成す事全てに物を言う資格はない
....だから狡噛さんへの気持ちについても、踏み込んだ事をして来なかったのだと思う



「.....今の発言自業自得だからな」

「え?....なっ、ちょっ、...ぁあッ」



見えはしないものの、直に蕾を弄る細長い指を想像すると恥ずかしさに顔を両手で覆った



「そん...ぁ..ないきなりっ....はぁ、ぁんんッ」



強過ぎる刺激に身を捩るが、逃げ場などどこにもない



「まだ序の口だぞ、初めてなところ悪いが優しく出来ない」


そう喋りながらも、刺激を送る指を休ませない伸兄は既に私には別人だ


「んぁ..私初めて....んって言ってな...ぁあっ!!」


私の言葉を遮る様に遠慮無く侵入する指に、思わず盛大に声が出る
それと同時に胸に生暖かい感覚がして、もうどこに思考を割けば良いのか分からなくなった


「....んっ、お前の考えなど簡単に分かる。どうせ初めてだと言って子供扱いされるのが嫌だったんだろ」

「んはっ...ぁぁッ...待って、待って待って止めッ...なんっ、か....っ!!ねぇ止めっ」


私の願いとは裏腹に動きを早めた指が私の全神経を集める
何か上り詰めて来る様な圧迫感に、止まらない手首を掴んだ


「力が篭ってないぞ、そんなので止められるとでも思っているのか」

「ぁあっ、あっ、はっ、もう無.....んん」


見計った様に口を塞がれると途端に全身が痺れた様な甘い感覚に襲われた

酸素を吸い込む事に精一杯になっている私を見下ろす表情は、どこか満足気だった


「もういいな」

「はぁ...何が?」



敏感になっている秘部に感じた重量
経験が無い私でもさすがに分かる



「え、もう!?」

「優しく出来ないと言ったはずだ」

「いや、でも、それは事の最後だって...」

「残念ながら今夜はこれがメインだ」

「ダメダメ!ちょっと待って!10分!10分休....ああッ!!痛、痛い!」

「力抜け!」

「そんな事言われたって!一回抜い...ぁんッ!」


途端に耳の中からクチュクチュといやらしい音が脳に響いて、驚いてそちらに集中してしまった

それをいい事に下腹部の窮屈さが増す



「はぁっ、締めすぎだ」

「知らないよそんな...ぁッ!ん...ちょっと、痛...い!止め」

「は...そのうち、慣れる...」


突き上げられる律動に歯を食いしばる
しかしすぐに、そこから漏れ出す卑猥な音が、私に快楽を教え込む


「ぁん、はぁ....っぁ、ん...」

「っ、どこでそんな声学んだんだ...」


そういう伸兄こそ、と言える程の余裕は無かった
今なら同僚の子たちの、声がどうのって話、分かるかも



「はぁ...そろそろ...」

「えっ...ああッ、ちょっと、激しっ...早く...ないっ!?」


まだ5分程だ
結構時間がかかるものだと思っていたのに


「はっ...悪いな、俺もっ...はぁ、お前のそんな姿に、慣れていない...」

「なっ、あッ、ぁん、はぁ、もう....」

「っ、はっ、っく....」



目の前がチカチカする

...伸兄と一線を超えてしまった

その現実の余韻は、予想以上に心地良いものだった



そんな事を考えているとふと視界が揺らぐ





「ねぇ!ちょっと!抜かないの!?」

「一回で終わらせるとは言っていない」

「そんな事言われたって、もう無理だよ!」


ベッドに沈んでいた体を、繋がったまま抱き起こされ、艶めかしい顔を見下ろす

私より背の高い伸兄の顔が自分より下にあった事なんて無く、私を見上げる視線にドキッとする



「....残念だな、今度はお前に動いてもらおうと思っていたんだが」

「はい、残念でした、だから離し

「仕方ないな」


急に腰を掴まれて、下から突き上げられるとバランスを崩しそうになる
咄嗟に首元に捕まれば、自分の首筋に鋭い痛みが走る


「はぁ...安心しろ、スーツを着ていれば見えない」


なんて事を、と怒ろうとしてみても、強制的に送り込まれる快感に掻き消される
















「んぁ...はぁ...ねぇ、ぁ...もう...」


もう疲れた事を暗示する




この事は狡噛さんには言えないな...
もう会えないけど、変態だと思われそうだ
....嫌われたくはない



そう考えていると、先程のが伝わったのかピタッと動きが止まる


「....またあいつの事を考えているのか」


なんで分かるんだと聞きそうになるが、忘れたいからと行為を承諾したのは私だ
ここで肯定などできない


「....もういい」


そう呟いた伸兄は、明らかに不機嫌だった


急に体勢を変えられ、背後から奥に入られると、言いようのない圧を感じた


「ちょっと...あぁ、はぁ...ゆっくり....」

「お前が悪い」


力任せに迫る快楽に溺れていく感覚が、私を変えていく



「は...はぁ....名前....」


そう私を呼ぶ声に、あぁ狡噛さんも私の事名前って呼んでたなと、無意識に涙が出た


「伸、兄...もう、無理....ぁあ...んっ!」


体を震わせてぐったりとする私を、それでも攻め続ける伸兄もそう長くない内に果てた















あぁ、明日は洗濯物が多そうだ




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