3.Boy gets boy


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・・・


 人間が人間足り得るために必要なものはなんだろう。
 人と動物の違いはなんだろう。

 俺はその一つを信仰だと思う。

 人間以外の生き物が何かに猛烈に心酔し信仰することはできない。

「う゛っ……はぁ……はっ」

 俺と夜盗が深く交わった時、俺は強烈に理解した。
 穂高と夜盗はもともと一つのものだったのだ。

 父親が夜盗を穂高から無理矢理引き剥がそうとしたのは間違ってない。だけど、穂高という人間の器があったからこそ、辛うじて抑え込まれていた夜盗は器を無くしたことですっかり正真正銘のバケモノになってしまった。

 だけど、やっぱり穂高から派生した夜盗は俺には想像もつかないほど深いところで穂高と通じている。

 夜盗は穂高の意思に逆らえない。いわば夜盗は穂高の手であり足であり、失われた目でもある。

 こんなにも深く、深く穂高とつながっている夜盗が俺はひどく恨めしく、憎く、羨ましい。魂で通じてる二人の絆に俺は入り込むことができないのだから。

 だから食べることにした。

 俺にとって、信仰の対称は神じゃない。仏じゃない。
 幼いころから座敷に囚われ無垢な瞳で世界の本質を見ようとしてきた、三家穂高という人間だ。庇護し仕えたい神秘の対称として、俺は穂高を敬愛している。

「ごめん……ごめん、穂高、っ……」

 君の友達。これが手に入れば、俺はお前と繋がれる。

 強烈な快感に意識を手放した後、何度がふいに意識を戻したが、相変わらず俺と夜盗は深く繋がっていて、そこから流れ込んでくる誰の何ともしれない感情に混乱することしかできなかった。

 嫉妬、独占欲、庇護欲、執着心、不安、恐怖、焦り。

 まるで映し鏡のようだ。

 俺の穂高に対するどうしようもない感情と同じ。そんなお世辞にも綺麗とは言えない感情を真向から精神に叩きつけられているような感覚に陥った。

 その感情の持ち主が夜盗なのか、穂高なのか。真実のところは分からない。

 夜盗は俺が思い切り噛みつけばぼろぼろと皮膚が剥がれていったし、俺が思い切りナイフを刺せば簡単に肉が切れていった。以前やりあった頃より断然脆くなっている。

 人間の姿をした夜盗は疲れ果てたようであまり抵抗はしなかった。人間を象ってもやはり中身は人間じゃないのか、腕を切り落としても、腹を裂いても、それはよく見るような人体模型とはまったく異なっていた。

 ハリボテの身体だ。見よう見まねで生成したような、絵本の臓器のような、妙にファンシーなものが体内に詰まってる。血圧というものが存在していないようで、切ったところで血が噴き出るようなことはなかった。それを素手で握る俺の手は赤く染まっていたけれど、今となってはそれが血なのか、元から現れていた体色の変化なのかははっきりとしなかった。

 もう味もなにも感じられない。ただ生理的に嘔吐感がせり上がってきて、時たま吐き戻してはまた喰って、俺は夜盗であったものを腹の底に埋めたのだった。完全に、夜盗と一体化するために。一つになるために。夜盗と、俺と、穂高と。

 人間の所業じゃない。

 そう思い至る人間らしい思考回路がとっくに欠落していることに、俺は既に気づけない。ただ一つ、切実な願いで満たされている。

「穂高……」

 こんな俺でも、愛してくレル……?




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