第2話


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 授業が終わると同時に大きく伸びをした。最近はなんだか寝不足がひどい。今朝も鏡を見たらすごいクマができていて思わず笑ってしまったほどだ。

「せっちゃんどったの?そのクマ」
「俺も知りたいよ。なんか朝起きたらできてた」
「心あたりねーのかよ。いつも以上に顔色悪いぜ?」

 もともと肌の色が青みよりの俺はいつも顔色が悪いらしい。中学の頃遠足で水族館に行った時、真顔でマンボウを眺めていたら館員のおじさんが飛んで来たことがある。臨海学校の時夜中にトイレに行ったら見回りの先生に悲鳴を上げられたこともある。

 よくよく考えてみれば我ながら不憫な人生だ。

「今日は晴久休みなのか?」
「午後から来ると思うよ」

 しばらく周りの席のクラスメイトと話したり、ゲームの対戦をしていたがなかなかご飯を食べる気にはなれなかった。そもそも今日は弁当も作ってきてないが。最近はあまり食欲が出ない。

「弁当忘れた」
「それ今気づくのかよ」
「購買行ってくる」
「おーう、残ってるといいな」

 気乗りはしないけど、さすがに何も口にしないで放課後の部活にいくのはまずい。テキトーに飲み物でも買って流し込んだほうがいいのかもしれない。

 こういう時ハルがいたらうるさいんだよな、とぼんやりと思いながら廊下を歩いた。

 なんだかんだでハルは過保護だから、俺が学校をサボり始めると朝家まで迎えに来るようになったこともあった。にこにこ笑って俺を待つハルはそのうち呼び鈴も鳴らさず土間まで上がって待っているようになっていたし、いつのまにか栄さんとも仲良くなっていた。

 そういう田舎特有の人間関係は当時の俺には新鮮だったのを覚えている。

 教室からは楽しそうな会話が聞こえてくる。中庭のベンチには初々しいカップルが並んでお昼を食べていた。日の光がちょうど入ってくるように設計されたこの中庭でお昼を食べる姿は、キラキラしていて微笑ましかった。幸せそうに笑いあう男女はとても絵になっていた。

 影になる校舎内にいる俺はあの二人から決して見えないんだな、と思うとなんだか変な気分になる。隔離されたような、切ないような、俺だけが置いて行かれたような、まったく別の世界を見ているような…。

「ほんと、何やってんだろ俺」

 こうやって何とも言えないノスタルジックな思いにとらわれるからいけないんだ。他人を見るのも大概しろよ、と言いたい。

 購買には軽い菓子パンくらいしか残っていなかったが、テキトーに選んで買うと飲み物を買いに自販機へ向かった。


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