第2話


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 開放された昇降口からは暖かい緩やかな風が入り込んできている。春の初めの寒さも安定し暖かくなった、一年で一番気持ちの良い季節だ。

 昼休みのこの時間、一階の玄関は異様に人が少なかった。窓の外では日の光を受けた葉が透けた緑になっている。それを見ているとなんとなく穏やかな気分になった。周りに人がいないことも案外気が楽になれる要因なのかもしれなかった。

 忙しない学校とは思えないほどゆっくりと時間が流れている気がした。

「あ、」

 自販機の前にはまた昨日と同じように風間がいた。昨日と違うのは風間が一人でいることくらいだった。買ったばかりの水を自販機の前で飲み始めたから、なんとなく気まずくて出て行けない。本当になんでこの学校には一つしか自販機がないんだ。

 風間のことは嫌いではないが、あからさまに嫌われている気がするからちょっと苦手だったりする。笹山に言わせると、「あいつは目つきがとんでもなく悪いから、悪意はないんだけど目が合うとだいたい睨みつけてるみたいになる」だそう。まあ俺もその部類に入るから分からないでもないが。

 顔はいいんだよなあ〜本当。

 クラスの女子に言わせると、ハルは正統派なイケメンらしい。確かにハルは目鼻立ちのはっきりとしたタイプだ。初めて会った時はこんな山奥にいてはもったいないんじゃないかと割と本気で心配した。

 当時の俺の感想は「田舎舐めてた」というただのアホみたいな一言だったが。語彙力のなさは理系だから許してもらいたい。

 そんな愛嬌がいい表情豊かなくっきりとした印象のハルとは対照に、風間は涼しげで精密な彫刻のようだった。ハルと違って表情があまり動かないからか、風間の場合はまるで人形のように整った顔立ちと言われていたりする。意思の強そうな凛とした目元で寄れば切るみたいなオーラを出してるのに。あんな怖い人形なんていないだろ、なんて心の中で思っていることは秘密だ。

 ハルといい、風間といい、笹山といい、なんでああもでかくてガタイのいい奴ばっか周りにいるのか。…単に俺の周りが異常なのだと思いたい。俺が平均であってほしい。

 とはいえ水を飲む度上下する喉ぼとけにばかり目が行く俺はつくづく救いようがない。やっぱり風間は美形なんだなと再確認したところで俺の恋愛対象も男なんだなと再確認してしまうだけだ。

「…お前、バレー部の」
「…どうも」


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