ネオンの微熱


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「友達としてとか、そういうの俺にはよく分からないけど、ただ…こう、俺じゃないんだなって」
「何が」
「…ずっと近くにいたのに、あいつが好きになるのは俺じゃなかったんだなって」

 瀬津が好きになる男は一体どんな奴なのだろう。知りたい。俺だって男だ、そいつ何がどう違う?

 あんなに一緒にいたのに、瀬津は俺と同じく恋愛に関心を示す様子がなかったから全く分からない。男を好きになるという自覚はしていたということだから、誰かを好きになったことはあるのだろう。

瀬津に好かれるなんてどんな人なんだろう。確かに瀬津は愛されるタイプだったけど、それは瀬津の危なっかしさとか、地味に面白みのある性格とか雰囲気とか、なんとも言えないところからだと思う。そのくせどこか影があって余計に放っておけない。例えばやたらと学校休むこととか。
 
「俺が一番近くにいたのに、他の奴見てたのかなって思うと…なんていうか、そんな奴よりきっと俺のほうが瀬津のこと見てるのになって」
「つまり、嫉妬?」

 小首をかしげて木下が言う。ほんとこいつ目でかいな。そりゃあざとい仕草が似あうわけだ。整った顔立ちに今更気づかされるが、それよりも可愛らしい薄い唇からショッキングな単語を平然と吐くものだから、飲みかけたお茶を戻しそうになった。

 でもまあ、あるよな。小学生とか中学生くらいの女子もよく揉めてたし。なんであの子とはしゃべるのに私とはしゃべんないのよ、とか私に分からない話私の前であの子としないでよ、みたいな揉め事ってよくあったよな。
 
「……あ、待って。確かにそうじゃん。俺嫉妬してる」

 例えば詩悠と瀬津がしゃべってたり、瀬津がバレー部の連中と俺には分からない話を仲良さげに話してたり、瀬津がバレー部にいじられてるのとか、なんかすんごい微妙な気持ちになってて。ああ、そうだ挙句、最近になって風間に瀬津を取られたような気分になって。
 
「うわああっそんなっ」
「え、何。俺なんか押しちゃいけないスイッチ押した?でも嫉妬だろ?まあ、それたぶんそういうことなんじゃねぇの」
「ええ!じゃあ俺はやっぱり小学生女子と同じ、ねちっこい面倒な性格拗らせてるの!?」
「は?」
「うわあ…そりゃ俺うざいわあ…まじか」

 そんな面倒な女々しい男だったのか俺は…。男が友達取られることに嫉妬とか、見苦しすぎるだろ。もし俺じゃなくてそれが他人だったら割と関わりたくねぇ…。思わず頭を抱えた。俺はただ自分で自分の首を絞めていただけだ。
 
「え、樋本、え?いや、別に何を思おうがいいんだけど、なんかその」

 ようやく合点がいき、頭を抱えつつも納得して悶絶する俺を妙な目で木下が見ている。これは俺の自業自得の話だったのに。
 
「お前なんか勘違いしてる…?俺はどっちかって言うと、その、瀬津?って奴をお前は抱けんのかって意味で嫉妬だと思ったんだけど」
「は、抱く?」
「嫉妬なんてそう意識してない奴にはしないだろ。だから、恋愛的な意味でお前はそいつのことを意識してたんじゃねえのかって」

 木下はなんでか居心地悪そうにそわそわしていた。


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