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「誰だよ…何なんだよ、あの女…」
「さっきの?あれは中学の」
「お前も!お前も俺を捨てるのかよ!」
「ちょ、誠司くん、落ち着いて」
「はぁ…はあっ…っふ…はっ」
荒い息が顔にかかる。目の前の誠司くんの顔は真っ赤に染まっていた。その目は充血し、口の端から垂れた唾液が俺の頬に落ちていく。掴まれた肩に力がこもった。体重を込めた力は大したことなかったが、爪が肩に食い込んで少し痛かった。
引きはがすこともできるその体を引きはがさなかったのは、俺の中にある誠司くんへの忠誠心のせいかもしれない。
「お前も、俺を置いて行くのかよ…」
絞り出したような声でそう言いながら、無意識なのか、固くなった自身のモノを押し付けてくる。潤んだ瞳を引き絞り睨みつけてくるその目は何かにひどく怯えて切羽詰まったものだった。
これがオメガなのか。これがオメガの発情期のフェロモンなのか…。たしかにコレは当てられる。俺はベータだからよくわかんないけど、我を忘れて今にも噛みついてきそうな普通じゃない誠司くんには確かにクる。腰にクる。
そんな誠司くんを見て、宥めるように声を掛けた。
「なんでそうなるんだよ。大丈夫だよ、誠司くん。置いてかない。捨てるわけない」
「はっ…どうせ思ってるんだろ…俺に生きてる価値なんかないって使えない人間なんだって、そう思ってるんだろ?そうだよな?死んだほうがマシだよな?思ってんだろ?」
「だから」
「くたばれよッ!どいつもこいつも!」
どいつも、こいつも…。俺に向けてではないその言葉に誠司くんをこうしてしまった核心に触れた気がした。
「誠司くん、俺を見て。」
俺は誠司くんを貶めた人間じゃない。だから俺を、俺を見て。
「…っ亮ちゃん……亮ちゃん…」
荒い息を吐き出しながらうわ言のように呟き始めた誠司くんは体を揺らしながら俺のスウェットのズボンを下ろした。どこもかしこも熱い誠司くんの昂ったモノが当たる。それを誠司くんはおもむろに俺の肛門へとあてがった。
「せ、誠司くん?」
「っはぁ…はぁ…じゃあ許してよ…収まんないんだよぉ…亮ちゃん…」
ぱたぱたと誠司くんの目から零れ落ちてくる涙が俺の頬を濡らした。その目に映った自分と目が合う。今、誠司くんの目には俺しか映っていなかった。
「証明して…?俺のこと捨てないなら、俺のこと置いてかないなら…」
ずんと衝撃が走る。
「***っ」
言葉にならない叫びが口から漏れた。びりびりと、じんじんと痛みが広がる。無理矢理に中に侵入してくる誠司くんのモノに痛みをこらえるためにシーツを握りしめた。
「…っい…はっ」
痛い、痛い痛い。でも声は出すな、声は出すな。痛みに飛びかけた頭に必死にそう念じる。今はただ誠司くんを受け入れて、そして安心させて上げられれば、誠司くんが治まるのなら何にだって徹しろ。
「オメガだって…俺は…」
「…ふっ…」
「なんにしても全力で、誰にも引けを取らないようにやって来たんだ…!」
「はっ…ん、くっ」
突かれるたびに激痛が走る。俺の上で熱に浮かされたような顔で腰を振る誠司くんが苦痛に顔を歪めた。
「なのに…!なのに、俺がオメガだっていうだけで、あいつら……」
「はっ…う」
こんなに俺が苦しくて痛くても、ヒートの体の誠司くんはちゃんと感じているらしい。時折呻いて体をぶるぶると震わせた。
「はぁっ…どんな職も与えてくれない…存在するだけで害を与えるだとか…」
一際大きく、怒りをぶつけるように叩きつけられた。思わず漏れそうになった悲鳴に、反射的に自分の手を強く噛んだ。歯が食い込み鉄の味が口の中に広がる。痛みは全て、オメガだというだけで才能を泥に捨てられた誠司くんの痛みとなって俺の中に入ってきた。
俺の体に覆いかぶさってきた誠司くんの背中に腕を回す。それだけで誠司くんの肩はびくりと跳ね、中に熱いものが出される感覚がした。
「何も…何も間違ってないよ…誠司くんは、なにも間違ってない」
「……俺にはお前しかいないのに…」
さっきまでまるで俺が見えていないかのように怒りをぶつけていたというのに、ふいに涙で光った瞳に俺を映すのだ。
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