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ぞくりと腹が波立つ。下腹部の空白がそれを埋めてくれるものを求めるように疼いた。
「俺にはお前が、全てなのに…」
「…そう、なんだ…」
背中を伝い手を伸ばす。触れた箇所は男では濡れるはずのない場所だった。押さえてみれば、飲み込まれるように指が入っていく。腕の中の誠司くんがびくりと震えた。
「誠司くんにとって俺は何だって?」
「お、おれにとって…んん…ぅん」
「うん?」
指先が固い箇所に当たった。そこに当たった瞬間、誠司くんは高い声で喘ぎ体を震わせた。
「はぁっ、お、俺の、おれの」
「うん」
「ぁあ…ひっ」
力んではへたる誠司くんの体を下にした。誠司くんのが抜けた瞬間鋭い痛みが広がったが、そんなこと気にもならないくらい欲情していた。
指では我慢できなくなったそこに自身を埋める。ろくに慣らしてもいないのに、俺とは違いすんなりと飲み込んでいくことに本当に誠司くんがオメガであることを認識した。誠司くんの足ががくがくと震え、勢いのない白濁が吐き出される。
「言って。誠司くん。」
「はぁっはぇ…亮ちゃんは……おれの、おれの支配できる…唯一の、世界…」
「はははっ」
たまらない。
我を忘れて腰を打ち付けた。誠司くんの跳ねる腰を押さえつけて、何度も何度も打ち付ける。
「あ、あぁ…んっ」
「誠司くん…」
「う、っんあ……ひぃっ」
「そうだよ、そう。俺があんたの世界だよ。誠司くんにしか俺を支配できない、ね?分かったよね。わかったよね?だからほら、ずーっと一緒にいようね。どこにも行かないで。ずっとずっとここにいて?俺の目に見えるところからいなくならないで?どこにもいっちゃだめだよ」
「はっ…はっ…亮ちゃん…亮ちゃん…」
悟ると言えばいいのか、気がついたと言えばいいのか。ただ、ああそうか、と思ったのだ。こうすればよいのだ、と。
俺も誠司くんも変わることは出来ない。ベータである俺はアルファになることができなければ、オメガの誠司くんがベータになることも出来ない。俺が誠司くんのうなじに噛みついたところで、それは痛いだけで番になることは出来ない。
だから、変わる必要なんてないのだ。変わらず世間から離れ、引きこもって世界を拒絶して孤独に溺れて、俺だけを知っていればいい。俺が誠司くんの世界なのだ。
「ここから出ちゃ駄目だよ」
だって外の世界にはアルファがいるから。もしアルファが誠司くんのフェロモンにでも当てられたら、もしアルファが誠司くんの首筋に噛みつきでもしたら…。俺は誠司くんを守れない。
でもそんなアルファがいたら、消してあげる。誠司くんに邪魔な存在は殺してあげる。誠司くんを傷つけるどんな存在からも俺が守ってあげる。
「これからもずっと、一緒に生きようね」
「…亮ちゃん……」
うつろな目で誠司くんが俺を見上げた。
これからもずっと。変わらない日々を、永遠に。
白い首筋に歯を立てて噛みついた。
了
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