説教しないでよ






「タッカー…そうか…

貴様らもあのキメラにされた娘を見たのだな」

アルの話でスカーもイーストで命を奪ったキメラの事を思い出し、そして兄弟もそのキメラと関わりあると気づいた…それにスカーは怒りしか湧かない

「『何を生み出す』…か

先日倒した錬金術師も言っていたな…『我ら作り出す者に敵うわけが無い』と…


生み出す技術だと⁉︎その自惚れがあのキメラの娘を生み出したのではないのか⁉︎
あのような悲劇を生み出す技術それが貴様らの崇拝する錬金術か⁉︎」

スカーの怒りの言葉にアルは言い返せないがエドは
「だからって…なんで殺す必要があった‼︎なんの権利があってあの娘の命を奪った‼︎スカー‼︎」
「貴様らはわかっていたのではないか?あの娘がもう元に戻れない事を、あのまま放っておけば実験動物と同じ扱いをうけ一生人間として扱われなくなるであろうと事を…」
ニーナの命を奪ったスカーへの怒りはあるが、スカーの言った通りエド達は言い返せないほどにニーナに対して何も出来なかった罪悪感があった


「…人殺しが説教しないでよ」
だけど1人だけスカーの話に嫌悪し、心底不機嫌そうにスカーを睨むのは令美
「…確かにタッカーって男もヤバい奴だったけどあんたも相当だわ…殺したからって救いにはならないってのに…

  ただの人殺しが神にでもなったつもり?

 どんな力を持っていても人間は神にはなれない」

錬金術師にしか目にないスカーは急に割り込んできた少女の言葉が理解できない

神と崇められてた令美と神の代行者だと言うスカー…似てる2人だがこの2人の考え方は天と地の差があるせいか

「…レイミ…

たしかに…オレ達錬金術師は間違いを犯してきた
だからと言ってあんたのやってる事を認めるわけにはいかねぇ!」

拳を強く握りしめてエドは自分達の罪も認めて、そしてスカーのやり方も認めない
「スカーひとつ訊きたい事がある、神の代理人って奴は人の為に尽くした医者の命も平気で奪うのか?」
「っ!エド‼︎」
エドがスカーに訊きたいことがあると令美はその内容まで知っていた、別にそれに対しては止めるつもりもないし、興味もない…だけど令美はエドを止めた

「アメストリス人のロックベルという医者夫婦に覚えは無いか」

「待っ…」
狭い裏路地だからエドは見えなかった、アルには見えてた…令美は視覚的には見えないがアリスのせいで見えた…走って駆けつけたウィンリィが…

「内乱のイシュヴァールに赴いて殲滅戦の命令が出た後もイシュヴァール人を助け続けた…」
「待って兄さん‼︎」
「エド‼︎」

令美にとって興味はない話だが…ウィンリィには聞かせたく無いと思っていた…彼女は知らなくていい真実

「スカー‼︎てめぇを助けて

てめぇが殺した医者の夫婦に覚えは無いか‼︎」

「兄さん‼︎」


幼い頃両親を亡くしたウィンリィ・ロックベルにとってスカーは…両親を殺した…

        「 うそ… 」

       復讐相手であるー





        ◇◆◇◆◇◆




「はめられたか…‼︎」

負傷者(ランファン)がいる中ホムンクルスを相手にするのは部が悪いのでひとまず逃げていたのに、ホムンクルスによって令美達は誰もいない細道へと誘導された

「何やってんのよ、あんた達の為に逃げてんのに」
「えぇ〜」
逃げる事が少ない令美はこういう無意識な誘導には慣れていない…ましてや相手の心を読めない相手だから令美は全部の責任をリンになすりつける

「本当嫌な奴…わかった別行動する、あんた達はあのデブやっつけて私がアレ相手にするから」
「無茶苦茶言うネ‼︎レイミちゃん‼︎」
キング・ブラッドレイの方が圧倒的に強いが、ブラトニーを自分1人で相手にするのは無謀だとリンは言う

「でもこのまま何もしなかったらヤバいでしょ…その女も」
「ゔっ…でモ…」

『若…』
2人の作戦会議(?)にリンに背負われてるライファンが声をかける
『私ごときにかまっていて、ここで若までも倒れてしまっては元も子も無いではありませんか』
ランファンの右腕はもう動かない、ホムンクルスにやられた傷は思ったより深い
『民無くして王は在りえない』
『しかし王が居なくては民は行き場を失います、我ら一族の悲願のためにも若には生きて帰ってもらわねばなりません』
と、先程からリンとランファンは母国語で話し始めていて令美は放置されている…だけどリン達の母国語は日本語に似ていて半分ぐらいは理解出来る

「…何、あんた邪魔にしかなんないから捨てて下さいって言ってんの?」

「…レイミ」
「でもあんたを捨てたところでこの王子が生きて帰れる保証はないけどそれでいいの?」
ランファンの言ってることは自己満足に近い、リンのためだと言って負傷した自分が許せない、だから命を落とそうとしているように令美は見えた
「…貴様が…居るではないか!貴様は我々より強い‼︎あいつらより強いではないか‼︎」
「それで?私が強いのは本当だけど、今この王子を助けることは確かに出来るけど…その後も助け続けるなんて私イヤよ」

「っ…」
令美の強さにライファンが自分のプライドを捨ててまで願ったのに令美の返事は真っ当すぎて苦しい顔をするランファン

「こいつはあんたの“王サマ”でしょ…ならこれからも守ってあげなよ」

「…どう…して…」
『うん…うん!レイミちゃんの言う通り‼︎捨てんぞ‼︎』
「面倒な王子預けられるのは絶対イヤ」
「レイミちゃん厳しいヨ〜」
令美も命を落とすなとリンと同じ事を言う…ランファンはそんな甘く優しい2人に笑って決意する…動く片手にクナイを持って…

『大義のために捨てるものなどいくらでもあるでしょう…

(貴様もあの兄弟と旅してるだけはある…)』


「っ!」
『…何を考えてる?…おいランファン‼︎馬鹿な事を考えるな‼︎

やめろ‼︎』


   ランファンはそのクナイを自分に向けた…






アカシ-Tsukimi