
可愛いお姫様
令美は今、軍人であるエドの名を使って宿泊施設を安い値段で泊まっている…支払いもエドがしてるが…だが今日は宿泊施設に帰れないかもしれない…病院でウィンリィーに捕まったのが始まりだ
「あのぉ…ヒューズさん…」
「なんだ?」
「これはいったい…」
まず令美はヒューズを覚えてなかった…イーストシティーで会い、エドに紹介されたはずだが…ロイの隣にいたおじさん達…位の印象しかない
「よくぞ訊いてくれました‼︎今日は俺の娘の3歳の誕生日だ‼︎」
「……」
なのに今、ウィンリィーに連れられしかもヒューズが買ったプレゼントを持たされてる令美はすこぶる不機嫌だ
[ 可愛いお姫様 ]
「パパーおかえりー」
「あらかわいいお客さん達」
事情もあまり分からず連れてこられたヒューズの家、出迎えてくれたヒューズの奥さんと子供…ヒューズは相当な親バカで娘エリシアに抱きついているのは令美もウィンリィーも引いた…
「前はなしたろ、ほらエルリック兄弟」
「えぇ」
「アレと一緒に旅してる子がレイミちゃんで幼なじみのウィンリィーちゃん、泊まる所探してたから連れて来た…妻のグレイシアと娘のエミリアだ」
「お世話になります」
「……」
泊まる場所なんかに困ってない令美はヒューズの言葉に驚いた…そしてウィンリィーを見ればなんとも気まずそうに令美から目を逸らした…確信犯だ
「エリシアちゃん、今いくつ?」
「ふたっ…みっちゅ!」
「やーん!かわいい〜‼︎」
流れに押されて令美の今日の寝床がヒューズ家になりそうな中、令美はウィンリィーを問い詰めたいのに小さな天使に父親もろともメロメロなので話しかけずらい令美
「(…なんなのコレ…)」
「でもいいんですか?私なんかが娘さんの誕生日におよばれして…」
「祝い事はみんなで分け合った方が楽しいだろ!
ようこそ ヒューズ家へ…」
「…誕生日」
『エリシアちゃん!お誕生日おめでとー‼︎』
お祝い事なだけあり家の中にはたくさんの大人と子供がいてテーブルには豪華な料理とケーキがありエリシアを祝った
「……」
パーティーが始まり賑やかになった家の中に令美はついていけなくて部屋の隅でひとり大人しくしてた
「(…場違い…こんな面倒な事に巻き込まれるなんて…)」
知らない顔ばかりのパーティーに馴染めない令美とは違いウィンリィーは容易くパーティーの輪の中に入って楽しそうだった…
「お姉ちゃん!一緒に遊ぼ‼︎」
パーティーに誘ったウィンリィーを令美は憎らしく睨んでたら子供が近づいてきた
子供の相手などまったくしたことない令美は固まった…過去、棗に懐いていた陽一の相手を何回かしたことあるが…こんなに騒がしくなかった…だが無視できない理由がある…令美に話しかけた子が今日の主役、エリシアだからだ
「はぁ…どうぞ、姫さま」
子供相手は面倒な令美はさっさと終わらせようと小さな花束を渡した
「わー!おねーさんすっごーい‼︎」
あ、と令美が気づいた時は遅くアリスを使って出した花束にエリシアは大興奮、そのせいで周りの子供達も集まりだし…
「何ー⁉︎今のまほう⁉︎」
「もう一回やって‼︎もう一回見たーい‼︎」
「…レイミって錬金術使えるの⁉︎」
「いや、今の錬金術じゃないだろ?器用なもんだなぁ…」
子供が盛り上がれば大人も寄ってきて令美は注目の的に…ウィンリィーには錬金術と思われたがヒューズは軍人なだけあってコレが錬金術ではないと気づいていた
「……手品みたいなものよ、練習すれば誰でも出来る」
練習したところでまったく出来ないけど令美は嘘で誤魔化した…アリスの事は言っても理解されないから
子供達が何度も手品を要求するので満足するまで令美はアリスを使って花をぽんぽん出していく…
ようやく盛り上がりが落ち着いて、令美は大いに疲れた…一刻も早く帰りたい令美は隅っこで休憩していた
「…?」
そんな令美の服を引っ張る人がいて
「…お姉ちゃん…おはにゃ、ありがとー」
エリシアが舌足らずな口調でお礼をしっかり言った…令美は別に子供は嫌いではない、騒がしいのが嫌いだが…
「…」
令美は優しくエリシアの頭を優しく撫でた…少し陽一を思い出して令美は懐かしさに笑顔した
「…なんだ…ちゃんと笑えんじゃないの…」
「…レイミの笑顔…可愛すぎる…⁉︎」
「……」
ヒューズは令美の笑顔を見て安心した…初めて会った時から普通の子供とは違っていたから…エドとアル同様に…
結局、ウィンリィーだけがヒューズ家に泊まるはずだったが、エリシアに気に入られウィンリィーにも泣きつかれ令美も一緒に泊まるはめになった…
◇◆◇◆◇◆
「お世話になりました」
翌朝、1日お世話になったヒューズ家にウィンリィーは頭を下げる、令美も眠たそうにだが軽く礼をする
「…本当にいいの?中央にいる間ずっと泊まってもいいのよ?」
「そんなに甘える訳にもいきませんから今日は自分で宿を…」
「…遠慮します」
(ひしっ…)
今日限りで泊まるのは遠慮したい令美とウィンリィーの服を掴んで離さない子がいる
「エリシア!…すっかりなついちやって…」
「こうして見ると3姉妹みたいだな…」
何が何でも離さないエリシアに両親が笑うが令美は笑い事ではない
「おねえちゃんいってらっしゃい早く帰ってきてね」
「こりぁ今日の宿も決まりね」
「へへ…妹ができたみたいでうれしい」
エリシアの可愛さに負けたウィンリィーの宿が決まった…それは 令美も泊まるということで…
エリシアに抱きつくウィンリィーを見ながら令美は小さなため息を吐いた…
◇◆◇◆◇◆
「私を巻き込まないで欲しいんだけど…」
「ごめんね!本当ごめんねーレイミ〜‼︎」
ウィンリィーと共に病院へ向かう中ウィンリィーに文句を言う令美、後ろには送ってくれたヒューズもいる
怒っている令美にウィンリィーは謝るが始終笑顔で反省してるかわからない…笑顔のウィンリィーがエドの病室へ入った時ー
「ボクは好きでこんな身体になったんじゃない‼︎」
それはアルの内に秘めた叫びであった…その言葉にエドはもちろん、ウィンリィーも止まった
「…好きで…こんな身体になったんじゃない…」
「…」
エドのくだらない愚痴が始まりでアルの想いが爆発した…令美は部屋に入らず、だがアルの想いは聞いて
「あ…悪かったよ…そうだよなこうなったのもオレのせいだもんな…だから一日でも早くアルを元に戻してやりたいよ…」
「…本当に元の身体に戻れるって保証は?」
爆発した想いは止まることはなく、アルはエドに想いをぶつけた
「絶対に戻してやるからオレを信じろよ!」
「『信じろ』って‼︎
この空っぽの身体で何を信じろって言うんだ…‼︎
錬金術において人間は肉体と精神と霊魂の三つから成ると言うけど!それを実験で証明した人がいたか⁉︎」
いつもアルとは違うとエドも気づきウィンリィーも…
「『記憶』だって突き詰めればただの『情報』でしかない…人工的に構築する事も可能なはずだ…」
「おまえ…何言って…」
「…兄さん前にボクに怖くて言えない事があるって言ってたよね
それはもしかしてボクの魂も記憶も本当は全部でっちあげた
偽物だったってことじゃなかい?」
アルの仮定にエドは言葉を失う…エドにとって考えも及ばない内容だったから
「ねぇ…兄さん、アルフォンス・エルリックという人間が本当に存在したって証明はどうやって⁉︎
そうだよ…
ウィンリィーもばっちゃんも皆でボクをだましてるって事もないあり得るじゃないか‼︎
どうなんだよ!兄さん‼︎」
(ガン‼︎)
アルの叫びはエドが机を叩いた事で止まった…静かになった室内にエドは
「…ずっとそれを溜め込んでいたのか?
言いたい事はそれで全部か…」
エドは怒るでも否定する事もなくアルに問い、アルが頷くと…
「…そうか」
エドはそれだけを聞くと何も言い出す事無く病室から出て行った、そんなエドに令美は不思議でならない
「(…なんで何も言い返さないの…?)」
「バカーーっ‼︎」
“ごわん”とすごい音と共にウィンリィーの怒鳴り声…アルがウィンリィーにスパナで殴られたようだ…
「ウィ…ウィンリィ…」
「アルのバカちん‼︎エドの気持ちも知らないで‼︎」
泣き出したウィンリィーにアルはオロオロと慌て出す、だがそんなアルにウィンリィーはまたスパナで殴る
「エドが怖くて言えなかった事ってのはね…
アルがエドを恨んでるんじゃないかって事よ‼︎」
ウィンリィーはエドの代わりに泣いて説明した
「オールメイル手術の痛みと熱にうなされながらあいつ毎晩泣いてたんだよ…それを…それなのにあんたはっ…
自分の命を捨てる覚悟で偽物を、弟を作るバカがどこの世界にいるって言うのよ‼︎
あんた達たった二人の兄弟じゃないの…」
泣きながらアルをスパナで叩くウィンリィーの言葉にアルは…
「追いかけなさい‼︎」
「あっ…うん…」
目が覚めたアルはウィンリィーの言った通りエドを追いかけた
「…やっぱ兄弟ね…世話がかかるところが似てる」
走って行くアルの背を見ながら令美はこれで兄弟の喧嘩は終わるだろうと確信する
