
他人じゃなくなる時
「…私、帰るから」
「…レイミちゃんは知ってたのか?」
ウィンリィーが兄弟を追いかけるのを見送りながら令美は用事がなくなったので帰ろうとしたらそれをヒューズに止められた
「アルの話にまったく驚いてなかったろ…気づいてたのか?レイミちゃんは…」
「…だったらなに?
私は“言わないと後悔する”って言っただけよ…」
令美はヒューズに責められてるように感じ真実を強気に言い返した
「…後悔…ね、他に言う事はなかったのか?」
「何で私が言わないといけないのよ…
彼女の様に言えっていうの?やめてよね…
私とあの兄弟は所詮『他人』なんだから…」
『他人』…エルリック兄弟との関係を言い切った令美はヒューズの言い分をばっさりと切り落とした…そしてヒューズの返事も聞かず令美はどこかへぶらりと行ってしまった
「…一緒に旅してるのに『他人』…か…」
[ 他人じゃなくなる時 ]
「…でレイミが現れて…あいつに殴られて…後は気を失って覚えてない…」
「…レイミさんなんで兄さんを気絶させたの?」
「……オレが知るかよ」
エドの腕と怪我が治り…アルとの喧嘩も一件落着し、病室には今兄弟とヒューズとアームストロングを入れてあの日の研究所について話し合っていた
エドは研究所で見た事を数枚の紙に書いて説明する…だがエドは令美についてはあまり話さなかった
「魂のみの守護者…貴重な人柱…エンヴィーなる者…マルコー氏いわく東部内乱でも石が使われていた…
ウロボロスの入れ墨に…賢者の石の錬成陣…
ただの石の実験にしては…謎が多いですな…」
「これ以上調べようにしても今や研究所はガレキの山だしな…そういやレイミちゃんからは何も聞いてないのか?あの子がエドを抱えてそいつらから逃げる事って本当に出来たのか?」
謎が多い今回の研究所の事件にヒューズが少しでも情報を聞きたくてエド達に令美の事を聞くが…
「…それは…」
「……詳しい事は何も言わねー
あの後すぐに建物が崩れ出してあいつらとは何も話してないんだとさ…
それ以外は何も話さない」
4人で考えても結局謎が多すぎて何も収穫なく終わりそうな時…頭悩ませる4人の目の前に
エドの見舞いにお客が1人、現れた…
キング・ブラッドレイ大統領
軍の頂点に立つ人物がエドの見舞いにあらわれた
そこに令美はいなかった…それは偶然か…
それとも運命か…
「…ラッシュバレー?」
「そう!オートメイル技術師の聖地ラッシュバレー‼︎」
その日の夜、病院に行かなかった令美は汽車の切符をエドに渡しにエドのとこに行っていたウィンリィーから詳しい話を聞いていた…エドが明日、中央を出るのは知っていたが令美は場所までは知らなかった…
エド達が次に向かう場所は南部の真ん中あたりの「ダブリス」
だがウィンリィーがテンション上げ熱く話すラッシュバレーはダブリスの手前にある街
「…来るの?」
「うん‼︎一度行ってみたかったのー!エドとばっちゃんの許可はとったから…私も一緒に行ってもいい?レイミ…」
「…私の許可が必要だと思わないけど…まぁいいんじゃない?」
「〜っ‼︎やったーー‼︎」
興奮しきったウィンリィーを止められたない令美は早々に諦めたが…令美が許可したことによりさらに興奮してるウィンリィーのラッシュバレーの話が中々終わらなかった…
『…いいんじゃねーか…“他人”でも…
“他人”にしか言えねぇってもんがあるんじゃねーか?』
『…』
『…それになレイミちゃんー』
次の日、護衛した2人に号泣するアームストロング少佐、それにヒューズの妻と娘に見送られながら汽車に乗り込むエド達
「『ダブリス』には何しに行くの?」
今更、旅の目的を聞くウィンリィーどうらやラッシュバレーのことしか頭になかったらしい…
「うん、兄さんと色々話し合ったんだけど師匠の所に行こうかと思って」
「あ〜オレ達ぜってー殺される…」
「殺!…あんたらの師匠ってはいったい…」
目的地にいる師匠のことを考えただけで泣いてる兄弟にウィンリィーは引き、令美は我関せず
あの日、ヒューズから言われた言葉を思い出してた…
「(…おせっかいな…おっさんね…)」
結局、令美はエド達に自身の事を話すことが出来なかった…いや、したくなかった
でも…
『…それになレイミちゃん…
レイミちゃんとエド達は
“ 旅仲間 ”ってヤツじゃねーか 』
「(…エド達の次には言ってもいいかもね…
いつかーー)」
◇◆◇◆◇◆
「なんでまた急に師匠の所へ行こうなんて思ったの?」
汽車に揺られながら令美の隣に座ってるウィンリィーが目の前の席の兄弟に『ダブリス』に行き師匠に会う訳をきく
「理由はふたつ、ここ最近どうにも負けっぱなしでよ…とにかく強くなりたいと思ったのが ひとつ」
「はぁケンカに強くなりたくて行くの?あんたらケンカ馬鹿?」
エドの返事にウィンリィーは呆れた、令美はまったく興味ない
「…なんて言うかこう…ケンカだけじゃなくて中身もって言うか…なぁ!」
「そうそう!」
「オレはもっともっと強くなりたい!」
「うん!とにかく師匠の所に行けば何か強くなる気がする!」
曖昧な例えしか出来ないエド達の説明にウィンリィーは呆れた…興味のないはずの令美も…
「…ふたつめは?」
「人体錬成について師匠に訊く事!」
「ボクら師匠の元で修業してたっていっても賢者の石や人体の錬成については教えてもらってないんだよね」
「そう、賢者の石が色々とぶっそうな事になってるからさここは思いきってストレートに元の身体に戻る方法を訊いてみようかと思ってんだ」
“師匠”や“修業”なんて単語、令美からしたら昔の漫画みたいな滝行など大岩持たされたりなど変なイメージしか出来ない
「もうなりふりかまってらんねーや師匠にぶっ殺される覚悟で訊いて…
訊いて…短い人生だったなぁアル〜」
「せめて彼女だけでも作っておきたかったよ兄さん…‼︎」
師匠の再会にまた恐怖して泣いてる兄弟に令美はまったく興味なかったが少しだけ気になったイメージは大男だ
「あっそうだ!元気の出る物!」
そんな兄弟にウィンリィーがバックからある物を取り出した
「じゃーんアップルパイだよー!」
「おっ美味そう、どうしたんだこれ」
「『途中で食べなさい』ってヒューズさんの奥さんが作ってくれたの」
出てきたアップルパイにエドはすぐに食いついて機嫌が良くなる…4人分だと思っているヒューズの奥さんはアップルパイをたくさんくれた、アルが食べれない分はエド行きだ
「レイミも…ホラ」
「…どうも」
エドが下品に(令美から見て)食べる中ウィンリィーから渡されたアップルパイを令美は素直に受け取った
「…こういうのも『おふくろの味』って言うのかね」
「…『おふくろの味』…」
しみじみとアップルパイを食べてなごむエド…そんなエドの言葉に令美はアップルパイをマジマジと見つめ味わうように食べる
「……」
「ヒューズさんも奥さんもエリシアちゃんもすごくいい人だった」
「…うるさい人」
「確かに、ヒューズ中佐って親バカで世話焼きでうっとーしいんだよなー」
「いっつも病室に兄さんをからかいに来てたよね」
アップルパイのせいで話題はヒューズにかわり、ウィンリィーとアル以外は愚痴になってるが
「…ほんとうに…『毎日仕事で忙しい』って言いながらしょっちゅう見舞いに来やがんの…
今度、中央に行ったら何かお礼しなきゃな…」
「…」
