ポンコツの身体






  癒しのアリスー

それを奪われた時から令美は覚悟はしていた

身体のためには癒しのアリスが必要不可欠…もう前みたいに無理は出来ない


『…無理するな』

 『私は平気

それより棗の方がヤバいでしょ、力使いすぎて病院送りになるよ』


生意気にも余裕だったあの時の自分に懐かしさを感じる令美は棗と同じで手のひらにある赤いソレを見る






「でえぇぇりゃ‼︎‼︎」

ウィンリィをエドに任せてる間、アルはスカーの相手をしていた…苦戦するアルにスカーが作り出した水蒸気で前が見えなくなるピンチに駆けつけたエドがスカーに蹴りをくらわす
「兄さん!助かった!正直レイミがいなくて大変だったんだ‼︎」
「あぁっ⁉︎俺より先に行ったのに何でいねーんだ⁉︎レイミのやつ‼︎」




      [ ポンコツの身体 ]





それはほんの数分前の話…


「…ありえない

汚い臭い吐き気がする…死んでもない‼︎」

「そんなこと言わないデ レイミちゃん…お願イ」
ホムンクルスが迫っている中、リン達は作戦会議中だった…時間がないのは令美にだって分かっているがライファンとリンの考えた作戦に令美は断固反対の姿勢…

「レイミちゃんにしか任せられないんだヨ〜」

「……わかった

この作戦上手くいかなかったらあんた殺すから」




「………ハイ」

説得に成功したリンはこの作戦に命をかけることになってしまった

「…まぁこの方が力を使わずに済むしね…」
令美の脅しにビビってるリンと励ましてるライファンは小声で独り言を呟く令美の言葉は聞こえなかった

「…じゃあ作戦開始ね」







        ◇◆◇◆◇◆






「みつけたぁ‼︎」

仕切り直しでエド達、兄弟がスカーとの交戦が始まろうとした時、グラトニーの乱入により止まる
「イシュヴァール人みつけたぁ‼︎」
「あ…ホムンクルス‼︎」
スカーに狙いを定めたグラトニーは無謀にもスカーに突っ込む

「リンの奴『先回りして捕まえる』だなんてほざきやがって…レイミもいねーし…くそっ…

何やってんだあいつは‼︎」


エド達が参戦しようとした時、マンホールから人が飛び出してきた
「「リン⁉︎」」


        「伏せロ‼︎」


リンは素早く動きグラトニーの口の中に手榴弾を突っ込んで離れる…内側から爆発すればグラトニーの上半身は粉々になる

「再生力があり過ぎるのも困りものだナ」

エドに頑丈なワイヤーを錬成させ、グラトニーに巻きつける
「内側から盛り上がる自分の肉で自らワイヤーに締め付けられる…

    捕ったぞホムンクルス‼︎ 」

身動きが取れなくなったグラトニーを確保したリンは高らかに宣言した…大事な部下の心配を心の内でしながら…





        ◇◆◇◆◇◆





       「……見事なり‼︎」

安易に表立って行動出来ないキングブラットレイはグラトニーとは別れ、裏道にある負傷したライファンの血をたどって始末しようと思った…だが…

野良犬の身体に巻きつけられたライファンの片腕を見て敵だが賞賛するしかなかった




        ◇◆◇◆◇◆





「はぁ…臭いし汚い本当臭い‼︎最悪!なんでここの奴らは下水が好きなの⁉︎死にたいの‼︎」
「……」
片腕を切断したライファンを令美が支えて今いる場所は地下水道…作戦は単純でキングブラットレイの追跡を逃れるため犬にライファンの片腕をつけ、ライファン達は地下水へ隠れる地下水ならライファンの血は水で流れるこれなら血の跡が出来ないから追ってはこれない…その隙に単独行動してるグラトニーをリンが捕まえる…


「作戦、上手くいったみたいね」
「…そうか…」
地下水道なんて汚い場所に文句が止まらない令美だがリンがグラトニーを捕まえたので取り敢えずは許すようだ

『 どうだ…出し抜いてやったぞ化物め…‼︎ 』



      ◇◆◇◆◇◆



「…約束は守ったゾ『ホムンクルス』ダ‼︎」

ワイヤーを縛って逃げれないグラトニーを見てエド達も動けない…捕らえたのはいいが次の行動を決めてなかったからどうすればいいか分かってない…そこに一台の車が突っ込んできた

「誰だ…‼︎」
スカーの足を銃で撃ちオープンな車にリンを後部座席に誘導するのはリザ・ホークアイで髪を下ろしいつもはしないメガネをかければ一瞬誰だかわからない

「待ったホーク…」
「詳しいことはレイミちゃんに聞いテ!彼女のお陰で助かったかラ‼︎」

「レイミ⁉︎」
リンが事情を全て令美に任せてホムンクルスとリンを乗せた車は荒々しく走り去ってしまった、取り残されたエドとアルは焦ったいが憲兵が来てはあれこれと話が出来ず、車の事も無関係を装うしかない
「大佐はいけ好かねぇ奴だが信用はできる後で情報が入るのを待とう…レイミがいれば話は早いけどな‼︎

まず今やるべきは…」

ホムンクルスを捕まえる作戦がクリアすればエド達は足を負傷しているスカーを捕まえるだけだ…

「捕まえるぞアル‼︎」

「うん‼︎」


         ◇◆◇◆◇◆



「…はい約束の場所までついたから後はあの細目王子が来るまで待ってれば、それまでせいぜい死なない事ね」

下水道の汚さに文句が止まらなかった令美だが決めていた脱出できるまでの場所までライファンを連れてきた
「若の事を変な名前で呼ぶな…だが助かった」

「本当感謝してよね…こんな汚い仕事させてちゃんとお礼は返してもらうから

あんたにもね」

生意気なだけの娘だと思っていたライファンは今回の件で印象が随分と変わった…異様に浮いて見える令美があの兄弟と何故旅を共にするか分からなかったが…根本は似た者同士らしい…と


ふっ…とライファンが令美の素直じゃない発言に笑って目線を逸らした瞬間、もうそこに令美はいなかった…
「…自分勝手な奴め…」
自由で不思議な存在の令美にライファンはもっとおかしくて笑う…

ホムンクルスと対等に戦える令美をあやしく警戒しないといけないのに…

   ライファンにはそれが出来そうにない






        ◇◆◇◆◇◆






「なんだとォ⁉︎」

エド達の混乱する声が響く…

最初、スカーを捕まえようとするエド達の前に1人の小さな少女が身軽な身体を使って横槍してきた…

その少女はスカーを助けに来たみたいで憲兵を見るや否や錬金術とは少し違う術を使い目眩しに煙を出して混乱を招く

「ちくしょー見えね…くっ…そ…」
煙のせいで前は見えず勿論スカーと少女の姿も見えなくなる

「スカーーッ‼︎」








   「で、スカーを取り逃したってわけね」

「うっせ!あんな奴が現れなかったら上手くいってたんだよ‼︎」
令美がエド達のところに戻ってきて時には全ては終わっていてスカーもあの少女もいなかった
「てか!レイミはどこ行ってたんだよ‼︎」
「…あの細目王子がピンチだったから助けてやったの、汚いし臭いし大変だったんだから」
本当は全てドッペルがやってくれた事だが令美はエドとアルに嘘をついた
「リンならホムンクルスを捕まえて大佐のところに…」
憲兵がいても堂々とする令美にアルは慌てながらコソコソと小声で簡潔にリンのことを話す

「命拾いしたか…細目王子…」

「おい、リンはレイミに何頼んだんだ…」
「兄さん…怖いよ」
リンの作戦が成功したことに令美は喜ばなかった…事情を知らないエド達は令美の反応に怖がるばかり…

ライファンを迎えにいってるリンの背筋もきっと凍ってることだろう


「…レイミ‼︎取り敢えず行くぞ‼︎」
「……わかった」



        ◇◆◇◆◇◆



「だめだ旦那!この先も憲兵が走り回ってる!しばらくここから動かない方が…」
「む…」
人がいない裏路地、そこには逃亡中の負傷したスカーと彼を助けた少女、東の大国シンから野望があってやってきたメイ・チャン…そして何故か炭鉱の町でエドに騙されたヨキがいた

「弾は貫通してまス、とにかく止血しないト」
「何をする」

「錬丹術で傷を塞ぎまス」
ホークアイによって撃たれたスカーの脚をメイが錬丹術を使った軽く治療する、便利だと言うヨキにメイは錬丹術をただの便利道具じゃないと正しい知識を説明するがヨキにはついていけない


「(……己れもあんな目をしているのか…)」
スカーは自身のイレズミを見てウィンリィの瞳を思い出す…あの復讐に燃える瞳を…

「どこまで行っても憎しみは憎しみしか生まんのか…」

「?、何か言いましたかい?」
「…いや」
理解していた事だがスカーは自身の右腕が改めて憎しみしか生まないとウィンリィの瞳を見て実感が湧く…

「いけねぇ‼︎憲兵隊が近くまで来てる!逃げるぞ!」
「ハイ!」
複数の足音にすぐ反応したヨキの指示のもと別の場所に逃げることに


   『…“兄”か何か知らないけど…』


スカーは逃げてる間に気になる事があった…スカーがウィンリィに手を出せなかったあの時…あの少女が言った一言が…

「(…あの女…何故兄者の事を知っていた…)」

国家錬金術師のエドワードの隣にいる少女、令美の事などスカーは一度も気に留めたとこなかったが…もっとも邪魔な存在だとは思っていた…

興味はないが不思議な力を使う令美をスカーはようやく見る目を変えなければいけなかった


   「(…邪魔をすれば…殺す…)」



「シャオメイ逃げル…」
スカー達と一緒に移動するメイは大切な友人の名前を呼んだが…この場には誰もいない

       「…………アレ?」




        ◇◆◇◆◇◆





「なんだそれ」
軍の車に乗ったエドは隣のアルがいつの間にかに持っている生き物に気がついた、助手席に座る令美も思わず後部座席の兄弟を見る
「さっき拾っちゃった…」
「…何ソレ、パンダ?」
学園生活が長い令美は動物園に行った事はないが有名な動物は知っている…小さい様な気がするが

「おまえこの非常時に何をのんきな‼︎捨ててこい‼︎」
「だってかわいそうだよ!こんなにふるえて!」
「騒がないでよ小動物の1匹や2匹どーでもいいんだけど」
ペットに厳しいエドが喚くのを優しいアルが庇う、興味ない令美は静かにしてほしいと思うだけ

「そりゃこんなにでかい手につかまりゃビビるだろ‼︎」
「えー?」
警戒中のパンダを指差すエドを敵だと見たパンダはその指を豪快に噛んだエドの叫び声が響く

「捨てろこんなケダモノ‼︎今すぐ窓から捨てろ‼︎」
「うるさいエド」
「ひどいなぁ兄さん、あ」
エドの次はアルの指まで噛むパンダだが鎧のアルには通用せず

「大丈夫痛くないよおちついて」
パンダの中で何かの順位が変わったのかパンダが落ち込んでる…

「アル、そのパンダ持っててもいいけど私には絶対近づけないでよ」
「あっ…ハイ」
最後に令美にキツく注意されてこのペット騒動は終わった、ちょうど車も目的地について止まった

そのパンダがメイの友人のシャオメイだと勿論誰も知らずに




アカシ-Tsukimi