
その手に染まる色
「はめられたか…‼︎」
負傷者(ランファン)がいる中ホムンクルスを相手にするのは部が悪いのでひとまず逃げていたのに、ホムンクルスによって令美達は誰もいない細道へと誘導された
「何やってんのよ、あんた達の為に逃げてんのに」
「えぇ〜」
逃げる事が少ない令美はこういう無意識な誘導には慣れていない…ましてや相手の心を読めない相手だから令美は全部の責任をリンになすりつける
「本当嫌な奴…わかった別行動する、あんた達はあのデブやっつけて私がアレ相手にするから」
「無茶苦茶言うネ‼︎レイミちゃん‼︎」
キング・ブラッドレイの方が圧倒的に強いが、ブラトニーを自分1人で相手にするのは無謀だとリンは言う
「でもこのまま何もしなかったらヤバいでしょ…その女も」
「ゔっ…でモ…」
『若…』
2人の作戦会議(?)にリンに背負われてるライファンが声をかける
『私ごときにかまっていて、ここで若までも倒れてしまっては元も子も無いではありませんか』
ランファンの右腕はもう動かない、ホムンクルスにやられた傷は思ったより深い
『民無くして王は在りえない』
『しかし王が居なくては民は行き場を失います、我ら一族の悲願のためにも若には生きて帰ってもらわねばなりません』
と、先程からリンとランファンは母国語で話し始めていて令美は放置されている…だけどリン達の母国語は日本語に似ていて半分ぐらいは理解出来る
「…何、あんた邪魔にしかなんないから捨てて下さいって言ってんの?」
「…レイミ」
「でもあんたを捨てたところでこの王子が生きて帰れる保証はないけどそれでいいの?」
ランファンの言ってることは自己満足に近い、リンのためだと言って負傷した自分が許せない、だから命を落とそうとしているように令美は見えた
「…貴様が…居るではないか!貴様は我々より強い‼︎あいつらより強いではないか‼︎」
「それで?私が強いのは本当だけど、今この王子を助けることは確かに出来るけど…その後も助け続けるなんて私イヤよ」
「っ…」
令美の強さにライファンが自分のプライドを捨ててまで願ったのに令美の返事は真っ当すぎて苦しい顔をするランファン
「こいつはあんたの“王サマ”でしょ…ならこれからも守ってあげなよ」
「…どう…して…」
『うん…うん!レイミちゃんの言う通り‼︎捨てんぞ‼︎』
「面倒な王子預けられるのは絶対イヤ」
「レイミちゃん厳しいヨ〜」
令美も命を落とすなとリンと同じ事を言う…ランファンはそんな甘く優しい2人に笑って決意する…動く片手にクナイを持って…
『大義のために捨てるものなどいくらでもあるでしょう…
(貴様もあの兄弟と旅してるだけはある…)』
「っ!」
『…何を考えてる?…おいランファン‼︎馬鹿な事を考えるな‼︎
やめろ‼︎』
ランファンはそのクナイを自分に向けた…
[ その手に染まる色 ]
「返してよ‼︎父さんと母さんを返してよ‼︎」
「…」
あまり見たくなかったウィンリィの姿を令美は見る事しか出来ない…もしこの場にウィンリィが近づいてくるのに令美がアリスで気づいていたら止められたかもしれないのに…それともこれは運命で変えられ無かったのか…もう令美は分からない
「待てウィンリィ…やめろ…“それ”はだめだ」
ウィンリィは理不尽に殺された両親の事を知り泣き崩れた…そして気絶した軍人が落とした銃を手にした…
「ウィンリィ‼︎」
「やめてくれウィンリィ‼︎」
ウィンリィはスカーに銃を向ける…
「あの医者の娘か…」
銃を向けるウィンリィをエドとアルが止めようと声をかける、静かだったスカーも…
「おまえには己れを撃つ権利がある…
ただし撃てばその瞬間に己れはおまえを適とみなす‼︎」
「スカー‼︎」
復讐を肯定するスカーだが今、死ぬわけにはいかないのかウィンリィを脅す
「てめぇウィンリィに手ェ出してみろ‼︎ぶっ…」
「殺すか⁉︎それもいいだろう‼︎どちらかが滅ぶまで憎しみの連鎖は止められん‼︎
だが忘れるな‼︎あの内乱で先に引き鉄を引いたのは
アメスト人‼︎貴様らである事を‼︎」
スカーは軍人でもないウィンリィが前に立とうが敵として彼女を殺す…自身の復讐のため彼女の復讐を殺す
「…」
「だめだ…撃つなよ…たのむから撃つなよ…」
「早く銃を下ろしてここから離れるんだ‼︎ウィンリィ!早く‼︎」
「…撃てばいい…」
エドとアルがウィンリィを止めようと声を掛け続けるがウィンリィは動かない…そんな中、エドの隣にいる令美だけは違う
「レイミ‼︎」
「両親の復讐が望みなら撃たなきゃ…泣いて震えてはダメ、それじゃあ相手に当たらないしあなたが殺される…」
スカーが動き出さないように警戒しながら令美はウィンリィに言う
「何言ってやがる‼︎レイミ‼︎」
「エド、わかってるでしょ…復讐相手に会えるなんて2度とない…運命よ…」
「黙ってろ‼︎」
「それはあんたよ‼︎エドワード‼︎」
スカーから目を離さないエドはウィンリィを後押しする令美を止めたいが、いつも冷静で熱と言う言葉を知らない令美が怒鳴り止まらない
「…っ」
「ウィンリィ…
そこの男は家族を殺されて復讐者になったの、その手を血に染めてでも復讐は終わらない…貴方もその男と同じところまで落ちる…その覚悟があるのなら…
撃つか撃たないかは自分で決めるの‼︎」
「レイミ‼︎」
ウィンリィがその手にある銃を…地面に落とした
「撃てないのなら戦場から出て行け‼︎邪魔だ‼︎」
ウィンリィが銃を下げた瞬間、スカーが動き出し地面を割る錬成を令美とエドに向かって攻撃してくる
「…っらァ‼︎‼︎」
結界のアリスで防いだ令美の後ろからエドは壁を上手く使いスカーの攻撃を避けウィンリィの元へ走っていく
「やめろぉぉっっ‼︎‼︎」
「っ‼︎」
『伏せろ‼︎』
『兄者‼︎』
エドがウィンリィを自分の背中に庇う、ウィンリィを隠すエドにスカーが右手をかざそうとした…
自分の身を挺してウィンリィを守るその姿にスカーは自分の兄と重なって動きを止めた
「…『兄』か何か知らないけど…
戦う気がないなら故郷に帰れば‼︎」
本当はエドに結界を張って大事をとってたのだが止まったスカーに令美は素早く足蹴りをし、アルが錬成でスカーをエド達から離した
「バカ兄‼︎何やってんだよ‼︎二人いっぺんに死ぬ気か‼︎」
「いっ…いや…これはレイミが…」
無茶をするエドに取り敢えずアルは怒った、エドは言い訳したそうだが事情があって小声でゴニョゴニョ言ってる
「レイミも無茶しすぎ‼︎…でもありがとう止めてくれて」
「…感謝されることしてない」
エドほどではないがアルは令美にも怒り…そしてお礼を言った…令美は認めないがアルにはわかっていた
アルは素直じゃない令美に少し笑って逃げてしまうスカーを追いかけていった…エドにウィンリィのことを任せて、令美もアルの後を追おうとしたが
「……撃てなかった…敵(かたき)なのに…」
「撃たないでくれ」
令美はウィンリィの言葉に足を止めた
「だって…父さんと母さんを殺したんだよ…なんで…エドとアル…レイミも殺され…っ…どうして…‼︎」
「撃たないって決めたからでしょ…自分で」
泣いてるウィンリィに正面から向き合った令美
「…私はあなたが復讐して笑うよりも
アップルパイ食べて笑う方がいいと思うけど」
「…レイミ」
「私も先に行くから…」
ウィンリィに言うだけいって令美はさっさとアルの後を追って行ってしまった、不器用すぎる令美にエドはため息…
「…おまえはさ…ラッシュバレーで赤ん坊を取り上げて母子を救っただろう、オレに立ち上がるために手と足をくれただろ」
エドはウィンリィが手に持つ銃を優しく取り上げる、ウィンリィの手はエドとは違いやわらかい手だった
「…お前の手は人を殺す手じゃない…人を生かす手だ…
あいつが言いたかったのはそーゆー事だ」
ウィンリィはやっと大声で泣いた
泣き叫ぶウィンリィをエドは支えることしか出来なかった
「(…レイミ…あいつ…)」
ウィンリィを支えながらエドは自分の前に立ちスカーの前に立っていた令美を思い出す
『(…エド私があんたを守ってあげる…
だから無茶でもして彼女を助けなさい)』
エドの頭の中に直接話しかけてきた令美にエドは内心すごく驚いて混乱した…すぐにアリスだと理解は出来た…そして令美がウィンリィに“撃て”と言った訳も…
『(…彼女に撃たせてはダメ…)』
エドは応援にやってきた軍人にウィンリィを任せてアルと令美を追いかけた
◇◆◇◆◇◆
アルを追いかけていた令美は足を止めた…いや止まった…
「ゴホッゴホッ‼︎…はぁ…はぁ…」
急な身体の激痛に止まらない咳…今までこんな事なかったが令美には原因は分かっている
この世界に来た時から覚悟はしていたこと…
「………だるっ…」
令美の手には自信の血がついていた
