違う世界なんだ


何も変わらない

私は私であり‥この“力”さえも変わらない

ただ

少し世界が変わっただけ

大切“だった”彼らが

この世界にいないだけ

それでも私はこの世界で生きていく



「暑い!汚い!もう最悪‼︎」
その町は小さく砂漠に囲まれてる、教会を中心とした町は教主を神のごとく崇めている‥町中は外人、見慣れない建物は令美からしたら物珍しいものだらけ
「何か軽い食事ちょーだい、あと水も」
「まいど!」
砂漠の中歩いて機嫌が悪い令美は気分を変えるため軽食屋にはいった。
この世界での共通語は英語、得意科目が英語である令美にとっては大助かり、数ヶ月すれば慣れて流暢に話せる様になった。

「こりゃ驚いた‥あんた“奇跡の業”がつかえるのかい⁉︎」
砂漠避けマントを頭にかけたまま小さい店で食事をしてる時令美は同じように客である三つ編み少年とでかい鎧を見にまとってる2人が店の店主と何やら盛り上がっていた。

彼らが壊したラジオを一瞬にして直したからだ

「なんだそりゃ?」
「ボク達は錬金術師ですよ‥」

アリスに似ているのに‥アリスじゃない

錬金術‥この言葉は知っているが彼らのような“力”の事は錬金術とは言わなかった‥いいや彼らの力は前の世界にはなかった

「(本当に違う世界なんだ‥ここって)」

錬金術は初めて見た令美はやはりあれはアリスではないと確信する‥似てるようで全く違う‥

この世界にはアリスがない

「いやぁーあんたが噂の天才・鋼の錬金術‼︎」
「なるほどーこんな鎧を着てるから二つ名が“鋼”なのか‼︎」
こんな小さな町でさえも知られている“錬金術師”一般知識さえも知らないとバレれば今の令美はただの世間知らず、怪しまれるかもしれない
「あの‥ボクじゃないくて‥」
「へ?あっちの“ちっこい”の?」
錬金術師には2つ名があり“鋼”なのは全身鎧の方‥ではなく赤がトレードマークの金髪チビが

「誰が豆つぶドチびかぁーーー‼︎‼︎」

“チビ”が禁句なのか少年は怒り狂い暴れ出した‥令美にとっては食事は邪魔だ

「ボクは弟のアルホォンス・エルリックでーす」

「俺が“鋼の錬金術師”エドワード・エルリック‼︎‼︎」

「(弟のほうが背が高いなんて‥可哀想な兄弟)」

これが令美と兄弟との出会い


「‥ごちそうさま」
「あぁ!まいどあり‼︎‥ってちょっと!お客さんお勘定は⁉︎」
兄弟に興味を無くした令美は店を出ようとするが店長に止められた‥前の生活のせいでお金を出すのを忘れてしまうのは令美のクセだ、しかも持ち金がないことに今気づく
「あぁ‥そーね」
手持ちが無い令美は周りを見渡し‥あの兄弟で止まる

「へぇ‥」

店長が待ちきれないのか変な方向を見ている令美に声をかけようとした時
「はい、これでいい?」
「へっ?‥あっはい!まいど‼︎」
ポンっとお金を店長に渡した令美は未だに騒いでる兄弟のところへ

本当は興味なんてなかったけど

「ありがと」
「は?」

この世界にきて初めて興味がわいた‥そこ鎧の中‥
「借りはいつか返すから‥またね‥」
「借り?」
令美は“いつも”は取ったとしてもお礼もましてや借りを返すこともないのだが今回はあえて兄弟にわざわざ礼を言った、本人達はまったく理由できないだろうが‥目的は顔を覚えさせるため

「‥なんだあの女」
「すっごく綺麗で可愛い人だねーでも何で“ありがとう”なんだろ?」
訳わからぬままさっさと出ていった令美を見届けた2人‥数分後兄であるエドの“あいつ俺の金スリやがったなーっ‼︎”と叫ぶ声が店からきこえた

後‥チビの腕とか、ね




        ◇◆◇◆◇◆




「‥なにあれ」
小さい町の人達が広場に集まり歓声をあげる‥なんでも教主様の“奇跡の業”を見るために、奇跡の業は令美にしてみれば小さい花が大きな向日葵に変わっただけで大したことしてないように見える

そんな奇跡の業に町の人達は大声で歓喜する‥それについていけない令美は世界の知識の無さを感じる

“アメストリス”
それがこの国の名前、前の世界では聞いたことの無い国名‥知識が無いだけかと思ったがこの国には科学の進歩が全くない‥それに一般常識とされる錬金術の存在がこの世界は自分の知らない世界だと決定づけた
この小さな町は東部にある一つの町で「リオール」、国の中心は「セントラルシティ」
「(この国の事を知るなら行くべきだけど‥)」
令美の目的はセントラルシティだったが、今は

今はあの兄弟に借りを返すのが、先か

クソな教主の演説を神のように崇める町の人達に興味を無くした令美はその場を後にしようとする‥が

(錬金術は“等価交換”一つの物からは一つの物しか生み出せない

   1から10を生み出すことが出来るのは

         “賢者の石” )

「私も行く、同行させて」
教主側の女性に教主に合うように兄が取り入ろうとしてるとこ発見した令美は兄弟達の前に現れた、彼らと同様教主に会うと‥

目的は全く違うが

「(中央行く前に寄り道)」
「おっ‥お前‼︎」
「私教主って奴のとこ行く、いいでしょ」
教主側の女性、ロゼか令美に話しかける前にエドとアルが反応する特にエドは
「君は‼︎」
「オメーは盗っ人‼︎オレの金返せ‼︎」
ロゼに了承貰うにもエドがキャンキャンとうるさい
「あーもうウルサイ、わかったわよハイ」
「‥なっ⁉︎こんだけ‼︎あんだけ盗っといてこんだけしか残ってないのか‼︎」
「仕方ないでしょ買い物したから無くなるに決まってんじゃん」
まったく反省なしの令美にエドの怒りが膨れ上がっていく‥エドは内心最初見た時“可愛い”と思ったのがバカだった‼︎‥と

「あの‥盗んだって‥」
ロゼが令美に気まずそうに事情を聞こうと令美を見る、教主側の人としては盗っ人なんて罪は許せないのだろう
「あぁ‥彼に少しだけ“借り”たの安心して借りはちゃんと返すから」
「ちょっと待て」
ペラペラとウソを言う令美を怖い顔したエドが止める距離が近い

「何」
「なにじゃねーよ!ウソいってんじゃねー誰もお前になんか貸した覚えねーぞ‼︎」
「借りは返すって言ってんのに文句言うの、まったくガキなんだから」
「おいっ‼︎」
令美達の言い合いがロゼには仲良く見えたらしくあっさりと教主の元へ案内された、令美も
「私はロゼ、よろしくね」
ロゼという少女は明るく優しい子‥

「(弱い子‥よく生きていけるな)」
令美をジロジロと疑いの目でエドが見てくるが気にすることなく

「私は神奈 令美‥令美が名前」




「兄さん2人に置いてかれるよ」

教主の方へ行ってしまうロゼ達を追いかけるためアルは不機嫌なエドに声をかける
「‥何なんだよあのカンナ レイミって‥レイミが名前?人の金盗んだってクセにあの態度‥っ‼︎なめやがって‥‼︎」
「(荒れてるなー)」
グチグチと小声で文句が止まらないエドはロゼを追いかける、そんなエドの後ろ姿を見つめながらアルはレイミの事を考える‥見た目はとても美しい子だけど‥あの態度は‥それに‥
「彼女‥いつ兄さんからお金をとったのかな?」
「‥‥‥‥」








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