こいつ馬鹿
長く派手に自分の事を説明したバリーだがアルも令美も全く知らず…盛り上げた(つもり)の空気は一気に静かになった
「ボク東部の田舎の生まれだから中央で有名だった人殺しの話なんて知らないし…」
「ぶぁ‼︎田舎者‼︎」
まさか自分を知らない人物がいるとは思わなかったバリーはショックを受ける
「そんなどーでもいい話はいいから、怖くもないし」
「なぁ⁉︎こいつも…ってお前誰だぁ⁉︎いつからいたぁ⁉︎」
「…こいつ馬鹿」
平然としている令美にバリーはまたもショック
「なんなんだこいつら…知らないにしたってオレの身体見てそれなりのリアクションってもんがあるだろうォ…ノリが悪いぞおめェら‼︎」
「敵にノリとか言われたくないんだけど」
バリーをもうすでに馬鹿扱いしている令美は馬鹿に冷たい
「うるせェ!もっとこう…“ギャー”とか“わー‼︎”とか“なんだその身体”とかよォ‼︎」
(かぱ)
「ギャーッ‼︎」
まるでお手本の様なリアクションをバリーはアルの鎧の中身を見てしてくれた
「わー‼︎なんだその身体‼︎変態‼︎」
「ううっ…傷付くなぁ…」
「アンタだって同じじゃない馬鹿」
いちいち叫ぶバリーにアルと令美は敵を前にしているのに呆れ気が抜けてしまう
「なんでェ死刑仲間かよビビらせやがって…」
「ボクは犯罪者じゃなーい‼︎」
何故かアルがバリーの仲間になってる…バリーの考えにアルは全力で拒否をする
「あァ?じゃあなんでそんなナリしてんだよ」
「ちょっと訳ありでね…生身の体が全消失した後にボクの兄が魂を錬成してくれたんだ…」
「(…そこまで言う必要ないと思うけど…)」
アルのご丁寧な説明、令美からすれば言い過ぎだと思った…馬鹿は余計な事しか言わないと知っているから
「…兄貴!げっへっへっへ、そうかい兄貴が‼︎」
下品に笑うバリーに令美の予感は当たってしまう
「何?」
「いや悪ィ悪ィところでおめェ兄貴を信頼してるか?」
「当たり前だよ命がけでボクの魂を錬成してくれたんだもん」
「…」
バリーの質問にアルは当然のように答える…そんなアルにバリーは楽しそうに言った
「おうおう兄弟愛ってのは美しいねェ…たとえ偽りの愛情だとしても…」
「(ほら、やっぱり…馬鹿な事しか言わない…)」
「…どういう意味?」
「おめェらは本当に兄弟なのかって事よ」
バリーの発言がイマイチ分かってないアル、兄弟の性格や身長の違いとかではなく…令美には何となく理解出来た
「…おめェよ…その人格も記憶も兄貴の手によって…人工的に造られた物だとしたら どうする?」
アルはあきらかに動揺した、バリーの言葉など考えた事が無かったから
「そ…そんな事あってたまるか‼︎ボクは間違いなくアルフォンス・エルリックという人間だ‼︎」
「げははははは‼︎“魂”なんて目に見えない不確かな物でどうやってそれを証明する⁉︎」
見て分かるアルの動揺にバリーは下品に笑い攻め立てる
「兄貴も周りの人間も皆しておめェをだましてるかもしれないんだぜ⁉︎そうだ!おめェという人間が確かに存在していた証拠は⁉︎肉体は⁉︎」
「…じゃああんたはどうなんだ⁉︎」
「アル落ち着きなさい、あんな馬鹿の言うことなんて聞かなくて…」
令美の忠告など聞こえないのかアル、しかもバリーの後ろから警備の軍人が銃を構えて現れた
「うっせえよ…」
バリーは容赦なく令美が力を使う前に軍人を斬り殺した
「『じゃああんたはどうなんだ?』だと?簡単な事だ‼︎」
「…最低」
どこの誰が死のうが令美は気にしないが…目の前で人が死ぬのは不快だ、バリーの足元にたまる血や動かなくなった人…人を殺したバリーは愉快に笑った
「オレは生きた人間の肉をぶった斬るのが大好きだ‼︎殺しが好きでたまんねェ‼︎我殺す故に我あり‼︎オレがオレである証明なんざそんだけで充分さァ‼︎‼︎」
言ってることはめちゃくちゃだがバリーの話にアルは放心状態…バリーに負けるはずがないアルがこんな状態ではどうなるか…令美はため息ひとつ…
「(まったくこの兄弟は…兄の方も大変そう…)」
とりあえず、令美はこのうるさく下品に笑う馬鹿を沈めたい…