私の先に行く太陽




他人と自分…

明確に違うと気づいた時には、私を見つめる周りの眼の色は変わっていた

小学生の私には、その瞳の色を受け入れられないし変えることも出来ず

逃げた



     [ 私の先に行く太陽 ]



小学生から中学に上がる時、私は東京から長野県へ引っ越した…全部私のせいだったけど家族は私を責めず見捨てる事なくしっかりと話し合って決めた

「お前見た事ないヤツだな…どっから来たんだ‼︎」
「…東京」
「東京⁉︎あの東京から来たのか‼︎」
春から新入生として新しい学校に通うから目立たないと思ってたのに…田舎のせいなのかみんな顔見知りらしく私は浮いた存在だった

別に友達などいらないとあの時の私は少し心がささぐれていたから独りで澄ました態度でいたのに

私に声をかけた子は何事にも真っ直ぐで純粋な男の子

       沢村 栄純との出会い



学校生活2ヶ月もすれば私の評価は東京からの新人からスゴイ人へと変わった

勉強、運動などの時間で個々の差が明らかになる時、本当は目立ちたくなかったけど私の不器用さが神がかっており手を抜こうとすると誰の目から見てもバレる…そーするとこの男が黙ってなかった
「名前‼︎今の本気じゃないだろ‼︎そんなのダメだぞ‼︎」
「沢村…」
「もっと本気を出せー‼︎そして俺と勝負だ」
「なんで体育の授業で勝負しないといけないのよ」
何故か沢村に気に入られてしまい入学してから私の周りをうろちょろする様になって…孤独の学校生活になる予想だったのに毎日が騒がしくなっていた

ハッキリ言ってウザい…特に1番ウザいのは…

「一緒に野球部に入るぞ‼︎」

「イヤ」

私が運動ができると知ってからこのセリフを毎日聞かされる部活に入る気なんてまったくないのに野球…まさかの野球部に誘われるなんて…

疑問しかない

「野球部って…私、女だけど」
「それがどーした?」
「マネージャーにでもなれって言ってんの?」
細かい作業しかなさそうなマネージャーなんて無理だと言おうとしたら沢村は高らかに大声で周りの目など気にせずに宣言した

「この俺沢村栄純が強くなるために!名前の力が絶対必要だ‼︎それとただ単に名前と一緒に野球がしたい‼︎」

「…」

思ってもなかった沢村の宣言に何も言えなくなった私…だって…

「…女子は野球できないけど」
「大丈夫だ!ウチは部員が少ないから特別仕様でいいって若菜が言ってた‼︎」
「…」
誰だよ若菜って…とツッコめる元気すら奪っていく沢村の元気に何も言えなくなった…野球ってそんなにユルくていいもんだっけ…

「…やっぱムリ」
「なんでだ⁉︎」


だが諦めるの言葉を知らない沢村から毎日野球部へ勧誘される…何度断れようとめげない沢村と、周囲からの目線が『スゴイ子』から『ヤバいヤツ』へと変わったのに気づいて私の心は荒れた…
「…ちょっと完璧すぎて」
「近づけないね…」
ずっと勉強や運動を満点にこなす私に対してのその反応は覚悟の上だった…まだ化け物を見る目で見られてないだけマシ…だけど…

「名前ー‼︎野球行くぞー‼︎」
「…」

沢村は全く変わらない…初めて会った時から諦めずにまっすぐすぎる…

「何度も断ってるのに…なんで諦めないの?」
「諦めない!野球部に入ってくれるまで誘う」
「いや、だからムリだからヤメてって…」
「名前が諦めて野球部に入るなら俺もやめる」
「それって結局私が野球部に入る話になってんだけど…」

これを毎日してると本当に疲れる…話が堂々巡りして解決しない…でも私も絶対部活には入らないと決めてるから譲れない

しかも個人競技ではなく団体競技なんて…


        1番無理な話だ…


         △▼△▼△▼△▼


東京にいた頃、自分が他人と違うなんて思ってなかった…ただ普通に友達に誘われてクラブに入った…友達と運動するのが楽しいと思ったから…

楽しいと思ってたのは私だけで

気づいた時にはコーチから特別視されるようになり、先輩より後輩の私が試合に出る、すごく期待されて期待されて…

だけどチームメイトからは仲間はずれにされた

人間って…子供って分かりやすくて残酷だ

男子は平然と言った… 言葉を選ばず『化け物』やら『ズルしてる』なんて嫉み僻みの言葉を私に直接…でも私はそれに対してまだ耐えれた…

耐えれなかったのは

女子…色んな人に陰口を言われ男子より内容がエグい話を楽しげに話してる…そしてその中に私の友達もいた…さっきまで私を励ましていた友達が楽しそうに私の悪口を言っていた…

嘘しかない私の悪口を楽しそうに話す友達を陰から見て…私の心はポッキリと折れてしまった

だから家族に無理をいって誰も知り合いがいない父方の祖父母が暮らしてるここに来たんだ…独りになってもいい兎に角誰にも嫌われず嫌な想いしない学校生活をおくりたいだけなのに…



          △▼△▼△▼



「…沢村、もう中学始まって3ヶ月はたった、今さら私が入部しても沢村は良くても同じ部活の人達は…その受け入れないよ…」
「?何でた?強い名前が入ればみんな喜ぶぞ」
「…そうかな…年下の女の私が入ったら、きっとみんな嫌がるよ…」

沢村が他人と違うのはもうイヤと思うほど分かったけど…野球部に入ったって東京での出来事がまた始まるって思ってしまう…

「だからもうほっといて…」

やっぱり独りがいい…他人に嫌われてずっと悪口を言われる生活なんてイヤだから…

「イヤだ‼︎」

「…」

「俺は!感じたんだ‼︎名前を見た時に‼︎」

場所も考えず疲れた私が耐えきれなくて沢村に想いをぶつけたから…沢村も自分の想いを声を上げる言った…教室の真ん中で…

「名前と一緒に野球をしたら絶対楽しい‼︎

名前が強く!そして俺も強くなって!最強になる!

 最強な2人がいるチームはもっと強くなる‼︎

   それってぜってー楽しいことだろ‼︎」


地元だから沢村の暴走には慣れてるクラスでも今日はいつもと違う様子だと気づいたみんなが沢村に注目する

「名前怖い事なんてない‼︎

俺ら最強の2人が一緒にいれば何も怖くねぇだろ‼︎」

「…」

怖い…なんて一言も言ってないのに…なんで沢村はそんな根拠もないことを言って…なんで私はそんな沢村に何も言い返せずに…

  少しだけ泣きそうになってるんだろう…

「安心しろ!

もし名前がイヤな想いした時は俺が全力で助けてやる‼︎」


     「…なにそれ…バカみたい…」



        △▼△▼△▼



その後、教室で恥ずかしい沢村とのやり取りのせいで…私は野球部に入った

完全に負けた…沢村に…

またイヤな想いをして後悔するかもしれないけど…それでもいいと思ったぐらいの説得力に負けて入部した

でもそんな心配はいらず、沢村の幼馴染の若菜とはすぐに友達になったし野球部のみんなはのほほんとしてて全然私のことスゲーしか言わないし…

なんでそんなに意地張ってたか分かんないぐらい…いい子達ばかりだった…

沢村の『俺ら2人は最強』説は理解出来ないけど…でも…楽しかった

「行くぞー‼︎名前ー‼︎」

「うん、今行くー‼︎

       お待たせ、栄純」


   ここに来て…栄純に会えて良かった



記念Tsukimi