心なしか呼吸が苦しい。
まるで泣くのを我慢している時のように、喉の奥に何かが詰まっているようだ。
不意に、膝くらいまで当たっていた波が腰辺りにまで来た。潮が満ち始めているのだろうか。
だとしたら、私は数時間後に溺死してしまう可能性が高くなる。
それとも船が着港したのだろうか?それなら、すごく馬鹿っぽいが乗客の誰かが気付いてくれるだろうし、
最悪気付かれなくてもすぐ死にはしない。
息は苦しいけど…
「アニキィ!!あんな所に女が倒れてやす!!」
「あぁん?何処だ?」
「砂浜っす!!ほら、岩の近くに!」
あ、見つかった。って、岩の近くなのによく発見できたね!すごいよお兄さん!!
てか、アニキって…え、本業の人?893?893屋さんですか、コノヤロー。
「おいおい…っあんなとこで寝てたら波に持ってかれちまうぞ!?」
「変わった格好してんなぁ…」
「言ってる場合か!おら退けっ」
「アニキ!?飛び込むつもりっすかっ!?」
「そんな、もう岸も近ぇんすよ!?いくらアニキでも危ね…っ」
ばしゃぁっ、と水面を裂く音が聞こえた。
どうやらアニキさんが助けてくれるらしい。でも寝てる訳じゃないんですよ!
体が動かないの!なるべく早くhelp me!!
っつかやっぱり此処で寝てたら死ぬんだね。
脳内で色々考えているうちにアニキさんが近くまで来てくれたようだ、水を叩く音が近い。
…アニキって言ったら元親さんだよね。元親さんだったら良いのに。
このアニキさんには無礼だけど…
「アニキー!!大丈夫っすかー!!」
「おうよ!!」
…あれ、石〇さん?…あれ、嘘、だって声そっくりで…
くそぉぉおおおおっ目さえ開けば!!目さえ開けば確認できると言うのにぃぃいい!!
そんな葛藤を繰り返してる間にも“アニキ”はざんざんと波を切って来ている訳で…
「おい、アンタ。大丈夫か?」
大丈夫に見えるなら一回海に沈んだ方が良いですよ。って聞けば聞くほど〇野さんボイス…!!
はしゃぎたいが、そろそろ本当に息が苦しい。
“アニキ”と呼ばれる人は石〇さんボイスなのか…!?
「おい…」
声近いな…相変わらず体は動かないし…近くでぼたぼた水の落ちる音が聞こえる。
なんかもうその声に「コイツ死んでんじゃね」的な色が含まれてるのは気にしない。
「…大丈夫か?」
どうやら本気で死んでると疑い始めたらしい、“アニキ”の手が脈の有る無しを確認しようと私の喉あたりに伸ばされる。
そうして“アニキ”の手が喉に触れた、その瞬間。
詰まっていた喉が通り、欲しかった空気が一気に肺を通り全身へ巡る。
それと同時にあれほど動かなかった手足は普段のように自由に動き、噎せた勢いで私の体は跳ね起きる。
「!?」
「げほっげほっ…けほ…んん゛っは…」
「お、おい…大丈夫か?」
“アニキ”が私に声を掛ける。
直ぐに確認したかったが、如何せん噎せたのが原因で目には涙が溜まっている。
視界が水に浮かんで識別が困難だ。
それでも、あの綺麗な銀色の髪と茶色の眼帯、紫の…肩掛けで、“アニキ”をアニキだと認識出来る。
「けほ…っ …!?」
「…?どうした?」
声が出ない…!!
私は元々体が強い方ではない。
昔、しまいっ放しになっていた布団を干さずにその上で寝てしまった時には、
埃を吸い込んで寝てしまったようでその後約3時間、声が出なかった。
その事を踏まえると、きっと今回も細かい砂を吸い込んでしまったのだろう。
咳は幾らでも出せるのだが、声の出ない原因はそれでも出て行ってくれない。
「 !! !!」
「な、なんだ?」
必死に喉を指差して伝えようと試みるが、通じない。
落ち着いて、落ち着かなきゃ伝わるものも伝わらない。今度はゆっくり喉を指差してから、次に胸の前で×を作った。
「…声が出ねぇのか?」
「!…(うーん、そうだけど一時的なものなんだよねえ。どうすればいいんだろう)…?」
「?」
とりあえず、喉を扇ぐように手を動かしてみる。
「…治る?」
「!(こくこく)」
「!そうか、それならいい。」
治るとわかったら、アニキは少し嬉しそうに笑んだ。
初対面の人の事なのに治ると知って安心するなんて、この人はどれだけ優しいんだろう。
「アニキー!!」
「おう!お前らは城に運ぶもん運んどけ!」
「了解しやしたー!!」
無事停船を終えた野朗共に指示を出し、アニキは私の方へ振り返った
「アンタ、何でこんなとこで寝てたんだ?っと…悪ぃ、今は声出ねぇんだったよな」
「…」
謝られても困るので、取りあえずいつもみたいにへらりと笑っておいた。
「…なぁ、アンタ行くとこあんのか?」
「(それがないんだよなぁ。って、そう言えばじゃあここはBASARAですか!?)」
「無い…のか?」
「(…まあ一応?)…(こくん)」
頷きながらまたいつもみたいに笑う。そしたら今度はアニキがにかって笑って。
「なら、俺の城に来い!」
「!?(何で!?)」
「ほら、立てるか?」
「…?…!?」
(いやいや、立てるけどさぁ!?初対面だよ!?自分で言うのもなんだけど不審者だよ!!?)
脳内で少し混乱しながらも、跳ね起きた拍子に投げてしまった携帯を後ろ手で拾いポケットに隠し、
そろそろと立ち上がった。髪が風に撫でられ、肩へと着地した。
着いて来い、と言わんばかりの背中を追いながら私の頭は気楽に
夏だなぁ、なんて考えていた。
2010.08.
----------
はい、2話目です!
なんていうかもう…勢いって恐いですねー。
亜真ちゃんどんだけ体動かないんだよ!って感じですねι
まぁ、まだ最初ですので不慣れな部分は容赦下さい。
ってか吟音前回の話の後書き何書いてんの?
神文は吟音だからね!?あああ、なんかすいません私なんかが先に書いて!!
はいっ、頑張りましょう。
今回は赤緋でしたー。
次は吟音です。