部屋に着くまで色々な質問をされた。
時折YESNOでは答えられない質問をされ、その度に答えあぐねているとアニキが気付き少ししょぼんとするのが可愛かった。
そうして居る内に部屋に着く。所謂天守という所だろうか?建物には詳しくないからわからない。
「そこ、座れ」
「…(はーい。)(こくん」
そこに着くまでずっと繋がれていた手が解かれる。ずっとあった熱が消え、何だか足りない気がする。
何となく一人で握ったり解いたりしてみた。アニキを見ると一緒だったようで、私と同じ事をしていた。
するとアニキもこっちを見て目が合って、笑う。何だかそれだけで楽しかった。
「さて、と。…あァ、茶、好きに飲めよ」
「(こく)」
お言葉に甘えて女中さんが出してくれたお茶をいただいた。
少し冷めているが私は猫舌なのでちょうどいい。
「アンタ、字書けるか?」
「(ここの字は多分無理ですね。南蛮語なら書けますけど)」
「無理なら×って書きゃいい。」
渡された紙を見て、硯がアニキの前の机に有る事に気付く。そしてアニキは真ん中より大分左に座っている。
つまり…そこで書けと?
間違っていたら恥ずかしいので、少し遠かった座っていた位置を大分前にズラし、机の前まで行ってみる。
「あぁ?んだよ、こっち来ればいいだろーが」
「(あ、やっぱり?)」
とりあえず紙を左手に持ち、アニキの隣に移動させてもらう。
そして苦し紛れに出来るだけ綺麗に
「I can't write japanese.
But I can speak japanese.」
と書いた。
読める筈が無い、わかる筈が無い。もしかしたら不審者として追い出されるかもしれない
(それが普通なんだけど)
それでも、何も伝えずに×を書いてしまうのだけは嫌だった。何かを伝えたかった。
声もきっともう少ししたら出るだろう。それまで、ここにいられるか。
「南蛮語…?」
「(こくん)」
「…南蛮の生まれでは無さそうに見えるが」
「(こくん)」
「!そういやアンタ、俺の言ってる事分かってるよな?」
「(こくん)」
「…さっきから頷いてしかねえが、まさか適当なんて事は…?」
「(ふるふる)」
「っつー事は…」
「…」
「喋れるが、書けねぇ…?」
「!(こくこく!)(大正解!)」
「そこでなんで南蛮語が出てくるのかは謎だが…声は出そうか?」
後ちょっと、という意を込めて人差し指と親指で僅かな隙間を作って見せる。
「そうか…んじゃ、俺は野郎共にちょっと用があるんでここを離れるが、こっから出んなよ?」
「(こくん)」
了解です、って感じの顔で返事して、アニキが最後また部屋を出るときにこちらを見たので、笑ってお見送りしてみた。
そしたらアニキも笑ってくれたから、多分間違っては居なかったんだと思う。
下からここまで結構な距離があったから、今度は邪魔されずに考えをまとめられるだろう。
(さて。最後に聞こえたあの声と台詞は十中八九幼き日の私のものだろう。しかしそれが分かったとて私になせる事は無い。
原因があの夢だとてあの頃の私の声にそんな力があるとは思えない。
お決まりのトリップではどこぞの神だかなんだかが良く出演するが、これもそうなのだろうか。
しかしそのパターンならなんらかの連絡が有って良い筈。何より鵺宵が気になる。
彼女も同じような夢を見たに違いない。それでは彼女も同じような環境にある事だろう。
さて…彼女はどこへ飛んでしまったのだろう。
無事なら何も言う事は無いのだが。
とにかく今の私に出来る最善の策は生きる事だな。なるべく帰る方法と彼女を探しながら。)
「ー…ぁー…」
今はまだこの程度の声しか出せないが、いずれ元の通りの声に戻るだろう。しかし声が出なくて良かった。
あの場面で声が出たとしても私では上手く説明する事など不可能に近かっただろうし、何より逆に混乱していただろう。
「げほっ、あー、あー。
…さて、これからどうなるんだろう…鵺宵…大丈夫かな」
(お願いだからザビーの所にだけは飛んでませんように!
…アレ、私の妄想で出来た鵺宵でしたー、とか…ないよね?)
2010.08.23
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はいっ3話でしたー。今回名前変換有りませんでしたね、すいません…
声出ないのに名前教えるのも如何なものかと思いまして。
まあ、やっと声も出るようになりましたし…なんとか頑張ります!
吟音ー、私これでも頑張ったよ!
次は吟音です。
今回は赤緋でしたっ。