04 >> 気になる事が多すぎて [2/6]
足音が聞こえ、扉が開く。
ああ、元親さんが戻ってきた。へらりと笑って、大丈夫かと気遣ってくれる元親さんに向かって出るようになった声を発する。
何て言おうか一瞬悩んだが、それ以前に口が勝手に動いた。
「こんにちは!はじめまして、亜真って呼んでください。」
「!声、出るようになったのか!」
「はい!あの…突然ですけど、私あなたのこと知ってます。」
「………はぁ?」
本当に突然の発言にアニキの気の抜けた声が響く。
まあ、そうだよね。知らない人間にあなたのこと知ってますって言われたらそうなるよね!ストーカー?ってなるよね!
“嘘”には数えきれないくらい助けられてきたが、嘘を吐くのは嫌いなんだ。
一度深呼吸をし、目を伏せてから意を決する。
「私が今から話すことは真実です。ですが、あなたから見れば途方も無い絵空事。
信じるも信じないもあなた次第ですし、聞くも聞かないもあなた次第です。…聞いて、くれますか?」
「……ああ。話せ」
前提条件を話した。
本題はここから、息をすっと飲み込み、綺麗な水色の目を見つめて話し始める。
まっすぐ見ていると呑み込まれそうだ。くっと顎を引き、軽く睨む形で腹を据える。意識をしっかり持たないと、ふざけたくなる。
「私は、この時代の人間じゃありません。ここからずっと先の日の本の人間です。歳は十八。性別は女です。」
「…先の人間?」
「はい。昨夜、私は普段感じない睡魔に襲われ、就寝しました。そして、後はあなたも知っての通りです。浜辺に倒れていました。」
一息に言い切り、息を吐く。別に特に何をしたわけでもないのに、眉根が寄り顔が顰む。表情で言うなら、悲しげになっているだろう。
何でだ?私はなぜこんな表情になっている?何か悲しいことがあったか?…何も…何もないはずだ。
「俺を知ってるって言ったのは、どう言う了見でだ?」
「私から見れば、あなたはキャラクターです。ここでのキャラクターの意味はつまり、実在しない人間。物語の中の登場人物と言えば、分かりやすいですか?」
「…俺が巻の中の人間だと?」
「はい。私から見れば、ですが」
ここでタメてもしょうがない。一気に簡潔に言ってしまう。
言い終わった後、やっぱり重い息が漏れた。私自身がキャラクターだと言われたら、別にそうなんだとしか思わないが彼は私じゃない。
駄目だ、悪い性格が顔を出しそうだ。
自分がキャラクターだから何?知ったところで何も変わらないし、自分に支障も出ないでしょ?
くっと眉を顰めて唇を噛む。駄目だ、駄目だ。嫌だ。こんなことを考える自分は大嫌いだ。
「ふゥん。なるほどね、だから俺を知ってる訳だ。」
「…え、あ…はい。」
「何呆けた顔してんだ?」
「しっ、信じたんですか?全部!?」
「ああ。何だ?嘘ついてたのか?」
「いえいえいえいえ!でも…ええ…信じますか、普通?」
あっさり過ぎる。いや、それも元親さんが“アニキ”足る所以なのか?素敵だけど!素敵だけど…さ!
あぁ、と返答してくれる元親さん。思わず立って大丈夫ですかと言う。
駄目だ、心配になってきた。この人もしかして簡単に騙されちゃうんじゃないの?駄目だ、不安だ!
どうしよう…四国大丈夫?中国に吸収されない?
「大丈夫かって…何がだよ」
「そんな…私が言えることじゃないですけど、ほいほい人信じちゃ駄目ですよ?」
「別にほいほい信じてねえよ。嘘か本当か見分けられるぐらいの目は持ってるつもりだぜ?」
「うっ…。じゃあ、私が今から言うこと、嘘か本当か見分けてくださいよ!」
「おー、良いぜ。」
変なことになってしまった!
だって…だってこの子!この子絶対怪しげな壺とか買っちゃいそうなんだもの!
しかし嘘…嘘ねぇ?うーん…
「私、メンマ大好きです!」
「…何だそりゃ。めんま?」
「あのおいしくないやつですよ、ラーメンに入ってる」
「じゃあ“大好き”って嘘じゃねえか」
「あっ!?ず、ずるい!」
「ずるいもんかよ、亜真が勝手に口滑らせたんじゃねえか」
おおお、名前呼ばれた!
てか元親さん笑った!
開けられた窓からふわりと入った風が元親と亜真の髪を揺らした。