「元就様、来ちゃいました」
扉の隙間から、ぬっと顔を出した女。
我は呆れて溜め息をついた。
「またこっそり忍び込んだのか、ひより」
「勿論です。見習いとは言え、忍ですから」
見習い忍のひよりは、忍とは思えない服装をしている上に、その性まで変わっていた。
「我は貴様が嫌いだ。即刻立ち去るがよい」
「嫌ですよ。折角危険を冒してまで来たんですから」
嫌いなんて嘘。普通に入ってきても、我はそなたを迎え入れると言うのに。変な奴だ。
「次の戦の策でもお考えですか?」
「…何故解った」
「元就様の顔を見たら解りますよ。また兵はただの駒って考えてるんですか?」
「兵など、所詮捨て駒よ」
「…そう言いながら、本当は一人たりとも捨てたくないのでしょう?」
何を言っているのだ、此奴は。
「貴方は本当は優しい。だから…」
「口を慎め」
我は目の前の女子を睨み付けた。
「貴様に我の何が解る?」
「…」
ひよりはそっと立ち上がった。
「何でも知ってますよ。私は…何よりも貴方の事を好いているのですから」
「ッ…」
ひよりは一歩下がった。
「では、元就様、また来ますね」
ひゅっと飛んで行く影。
我は…何をしているのだろう。
しかしその日以降、彼女が来ることはもう無かった。
もっと君に、伝えたい事があったのに
(消えることはないだろう)(馬鹿者め…)
2010.06
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これ悲恋ですかね…?