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掴みかけた手
>> あの時掴みかけた手は、  [4/4]

その知らせの後、某はすぐさま部屋を飛び出して、ひよりの居る部屋に我先にと駆け込んだ。


「ひより殿!」
「真田さんっ」


ひよりは吃驚したように某を見た。その瞳は純粋で、咎めの色はないようだ。某は唇を噛み締めて、床に擦り付けるように頭を下げる。


「ひより殿、ご無事で何よりでございます。しかし、怪我をさせるなど某、一生の不覚!一生掛けて償います故。だから、どうかっ」
「真田さん」


ひよりに呼ばれ、某は恐る恐る顔を上げた。しかし彼女は、いつものあの優しい笑顔を某に向けて下さっていた。


「忝のうございます!怪我をさせた某に、その様な笑顔を見せて下さるとは!」
「真田さん……そんなに自分を責めないで下さい」


ひよりは、彼女らしい優しい声音で言った。諭すような柔らかい声。


「私は真田さんにこの命を救って頂いたのです。私の方こそ、一生を掛けて感謝すべきなのです」
「某は……ひより殿に怪我をさせてしまって…」
「怪我なんて良いんです。生きてる事が嬉しいんです」


ひよりの言葉に、某は胸を打たれた。


「私は病のせいで何時死ぬか分かりません。ですから今をしっかり生きたいのです。……真田さん、有り難う御座いました」


ひよりは頭を下げた。


「ひより殿……一つ、お願いを申しても宜しいでござるか?」
「はい!喜んで!」


某も、今をしっかり生きるため。


「その、ひより殿の……手を握らせて頂けないだろうか?」


するとひよりは、少し驚いたふうだったが、すぐに笑顔で答えた。


「勿論です。こんな手で良ければ」


某はもう離さぬよう、しっかりと握った。



あの時掴みかけた手は、今しっかり掴んでいる
(は……破廉恥ィイイ!!)(真田サン!?)


2010/04
2012/02/13編集
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