01:長女

「えー、何々〜?六つ子の会合に私のこと呼んでくれるなんて珍しいじゃん〜お姉ちゃん嬉しい〜」

某日夕方。トド松に呼び出されてチビ太君のおでん屋へ向かうと、既に飲み始めている六つ子がいた。チョロ松と一松の間を空けてくれたので、ベンチを跨いで真ん中に座る。うはあ、六つ子サンド!顔が緩んじゃう。

「いやー、たまにはなまえ姉ちゃんとも飲みたいじゃん!」
「チビ太、松野家に生まれしビーナスこと、なまえ姉さんにビールを頼むぜ」
「でも本当になまえ姉さんって僕らの良心だよね」
「えー。なに急に?」
「俺たちと違ってちゃんと働いてるし」
「やさしいし〜」
「彼氏的な人がいたこともあったしね!」
「んもー、何なのホントに〜。お姉ちゃんをおだてても何も出ないぞ〜」
「いやー、ねーさんはお金もってぶ!」
「は?なに?」
「何でもない何でもない!」

何故か十四松の頭が一松によって皿に押し付けられてるけどまあいいか。よくみる光景だ。

「あいよ、ビールお待ち!」
「ありがとうチビ太くん!」
「んじゃあ俺らの姉ちゃんにかんぱーい!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
「え〜?もう嬉しいなあ〜」

そうして六つ子たちと他愛ない会話をしながら飲み食いして、どんどん夜がふけていった……。

「……んな、……るよー……」

遠くで声が聞こえる。眠いなあ。まだ寝てたい。

「なまえ、ねぇ、なまえってば」
「んんぅ……」
「なまえ、財布どこ?」
「ん……さいふ……まって……」
「こ、こら!女の子がそんな格好すんな!」
「らってかばんしたにあるんらもん……はいさいふー。ひょろまつてきとーにはらっといてー」
「はいはい……ってちょっと!?なまえ!起きて!」
「んーねむ……」
「ヒャッ、ちょっと!誰かどうにかして!」
「うお〜いなまえ〜、シコ松に抱きついたりしたらクソダサ童貞がうつるよ〜」
「うぉい!」
「んん……やあだ……」
「うお……あーやばい、これやばい」
「ちょっと〜、おそ松兄さん変な気起こさないでよ〜?」
「いや、まじむりだってこれっ、一松パス」
「え、ちょ……ねぇ、なまえ……?かえるよ、立って」
「やあ……おんぶ……」
「ええ……」
「フッ……俺がおぶってやろうか「僕がねーさん乗っけてこっか!?」えっ」
「十四松テンション上がって落としそう」
「たしかに!」
「しゃーない、カラ松そっち持って。チョロ松、払った?」
「払ったよ。なまえの鞄も持った」
「よーしじゃあかえろー。じゃあなーチビ太ー」
「ごちそーさまー」
「ばいばーい」
「おーう、気をつけて帰れよー」

翌朝。

「……チョロ松、昨日いくらだった?」
「え?全部で三万くらいかな?」
「奇遇だね、ちょうど私の財布から三万ほど消えてるんだけど」
「……皆、散れ!」
「あー!こら待ちなさーい!お姉ちゃんを財布扱いするなー!」

弟たちがやたら姉さん姉さん言ってくれる時は、大体私のお金が目当て。