02:スキンシップ

「弟はいねがー」
「いないよー」
「フッここにもいないな」
「僕も自分のことをなまえの弟だと思ってないよ」
「ほんっと君たちかわいくないわね」

とある昼下がり。一階の居間にたまっている弟たちに声をかけたはずなのに、上三人から返って来たのは可愛いげのない回答だった。すーっと目線をずらし、テーブルに顎を乗っけて脱力している一松の隣に座った。

「一松〜」
「……なに」
「一松は私の弟だよねぇ」
「そうらしいね」
「不本意みたいな反応やめて?」
「……なに?」
「なでなでさせて?」
「はあ?なにそれ、何で急に」
「いやー、友達から赤ちゃんの写真送られてきてさー。私も可愛いもの愛でたいなあと思って」
「他あたってもらえる?」
「ええ〜……十四松〜」
「あい!」
「なでなでしていい?」
「うーん、いいけど僕べつに可愛くないよ?」
「何言ってるのかわいいよ!自信持って!」
「えー。なまえ姉さんが満足するならいーけど」
「ありがとう十四松!」

なでなで、十四松の頭を撫でる。か、か、かわいいい……!私の弟めちゃくちゃかわいい……!

「やば、可愛すぎてどうにかなる」
「まじっすか!」
「ちょ、ぎゅーしていい?」
「それはちょっと姉さんでもあかんですなー!」
「あかんかあ……トド松〜」
「なあに?」
「ぎゅーしていい?」
「もう、姉さんってばしょうがないなあ。いいよ、はい」
「ありがとう〜!」

さすがは末弟トド松!私の過剰なスキンシップを受け入れてくれる弟はトド松だけだ〜!ぎゅー!とトド松を正面から抱き締めると特大級の安心感に包まれた。はぁ〜落ち着く〜……単に人肌恋しかっただけかもなあ、これ。

「なまえー、ちょっといい?」
「母さん。なあに?」
「お昼ご飯の支度手伝ってちょうだい」
「はーい!トド松、ありがとね!」

お昼ご飯を作り終えて居間にごはんを運ぶと、トド松の姿がなかった。どうしたのかと聞けば、「外行くからいらないってさ」とチョロ松が教えてくれた。それなら先に教えてくれればいいのに……。まあ何か急用だったのかな?帰ってきたらどこ行ってたのか聞いてみよっと。



(ここからは六つ子の心情つき会話のみ)


「弟はいねがー」
「いないよー」
「フッここにもいないな」
「僕も自分のことをなまえの弟だと思ってないよ」
「ほんっと君たちかわいくないわね。……一松〜」
「……なに」
「一松は私の弟だよねぇ」
「そうらしいね」
「不本意みたいな反応やめて?」
「……なに?」
「なでなでさせて?」
(は?)
(えっ)
(あ?)
(((何それめっちゃされたい)))
(何で先に用件言わねーの!?それなら俺されてもよかったよ!?金取るけど!)
(やられた……これじゃあ俺達は自然とアウトオブ眼中……!)
(何だよそれ滅茶苦茶ご褒美じゃんかよされてえええなまえになでなでされてみてえええ)
「はあ?なにそれ、何で急に」
「いやー、友達から赤ちゃんの写真送られてきてさー。私も可愛いもの愛でたいなあと思って」
「(二人ならまだしもこの状況……普通に考えて受けたら殺されるだろうな……)他あたってもらえる?」
「ええ〜……十四松〜」
「あい!(きた!姉さんのなでなで!)」
「なでなでしていい?」
「うーん、いいけど僕べつに可愛くないよ?(でもやってもらいたい!)」
「何言ってるのかわいいよ!自信持って!」
「えー。なまえ姉さんが満足するならいーけど(はやくはやくー!)」
「ありがとう十四松!」
(あはー、姉さんの手気持ちいいなあー)
(くうー!十四松のやつずりーぞ!)
(だが奴なら仕方ない……)
(ま、まあなでなでなんてまたいつでも機会あるしね。いつでもチャンスあるからね)
(ケッ……)
「やば、可愛すぎてどうにかなる」
「まじっすか!」
「ちょ、ぎゅーしていい?」
(((((それはアウト!!!!)))))
(は!?はあ!?!?あいつ自分で何言ってんのか分かってんの!?)
(仮にも男と女……!そんなに密着することなど兄弟であろうと許されるわけがない!)
(断れ!断れ十四松!!)
(十四松てめぇ断らねぇとあとでシメんぞ……!)
「それはちょっと姉さんでもあかんですなー!」
「あかんかあ……」
(ナイス十四松!)
(フッ……グッジョブだぜ)
(流石にここでOKしちゃったらまずいよね。僕ら、成人過ぎの兄弟だよ?子供ならまだしも、この年になって男女が抱き合うなんてふしだらでしかないよ)
(よーしよーし)
「トド松〜」
「なあに?」
「ぎゅーしていい?」
「もう、姉さんってばしょうがないなあ。いいよ、はい」
(((((はあああああああ!?!?!?)))))
「ありがとう〜!」
(信っじらんねぇ!言いやがったよこいつ!)
(トッティィィ!今のは断る流れだろトッティィィィ!)
(何でこいつこんな簡単にライン越えちゃうの!?怖いんだけど!)
(トド松あとでコロス……)
(コロース)
(フッ……兄さん達バカだなぁ。したければ素直にしたいって言えばいいのに。ああ姉さんいい匂いだなあ。柔らかいしずっとこうしてたい。たとえこの後兄さん達に殺されようとも、僕は本望さ……!)
「なまえー、ちょっといい?」
「母さん。なあに?」
「お昼ご飯の支度手伝ってちょうだい」
「はーい!トド松、ありがとね!」