駅へと向かう道すがら、彼女がぽつりとつぶやいた。いつも明るい彼女が、ほんの一瞬、みせた影。
「ほんまになあ」
関西でヒーローを続ける俺と、関東で暮らす彼女と。互いの休みが合う時だけの、短い逢瀬。
「時は止められへんけど」
その時、ずっと言いたくて言えなかった言葉が、不意に口をついて出た。
「ずっと一緒にいることは出来るで。自分、こっちで暮らさへん?」
「こっちでって、生活どうすんのよ」
「俺の嫁さんになったらええやん。や、ちゃうな、俺の嫁さんになってください」
すると彼女は大きく目を見開いて、泣きそうな顔で笑いながら「言うの遅い」と呟いた。
なんや、自分も待ってたんか。俺ら、ほんま似た者同士やな。
「で、どないする?」
「しょうがないな、なってあげるよ」
そう応えながら、俺の大好きな意地っぱりの彼女は、ひまわりのように笑った。
2021.8.8
輪ゴムさんに書かせていただいたネームレスのファットガム夢
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