「幸村、ちょっといいか」
HRが終わるのと同時に、担任の教師に声をかけられた。今日は始業式。授業も部活もないので午前中には帰宅することができる日。帰ってからの予定を考えていると、不意に新しく担任になった先生から声をかけられた。
「何ですか?」
「決まって早々悪いんだが、学級委員の最初の仕事だ」
先ほどの係決めで俺は学級委員になった。始業式早々仕事とはいったい何なのだろうか。
先生も先生で何だか言いづらそうだ。そんなにも大変な仕事なのだろうか。
「…それで、仕事っていうのは」
「あっああ…ある生徒に今日配ったこのプリントを届けてほしいんだ」
「ある生徒?」
このクラスに始業式早々休んだ生徒なんていただろうか?三年生にもなれば、大体の生徒の顔ぶれは覚えている。クラス表で見た生徒は大体登校しているのだが。
「先生、どの生徒に届ければいいんですか?」
「…」
「先生?」
「名字名前」
「名字名前って」
「そうだ、あの名字名前だ」
名字名前。入学当初から一切、この立海大学付属中学校に登校したことがない、立海では有名な「ヒステリック幽霊女子」略して「ヒス子」。なぜこのようなセンスのかけらもないあだ名が付けられたかと言うと。ある日あまりにも登校してこない彼女を心配した学級委員長は、数人の生徒をつれ、彼女の家へを訪問した。インターホンを数回押すと、ブランケットを頭から被った名字名前が現れた。不気味な雰囲気を醸し出す彼女に、恐る恐る声をかけると…その後はもう、ひたすら訳の分からない言葉を名字名前は叫んだそうだ。それから先生や学級委員やらが訪問する度に、彼女は同じような行動をとったという。この出来事から、彼女は「ヒステリック幽霊女子」と名付けられたのだそうだ。
「幸村、行けるか?」
「…はい」
「すまんな、先生はこれから職員会議があるから一緒に行ってやれないんだが」
「いえ、大丈夫です」
「そうか、じゃっ頼んだぞ」
そう言った担任の表情はどこかほっとした顔だった。まさか彼女が同じクラスだったなんて。俺は重たい腰を上げ、担任からプリントを受け取り、重いため息をついたのだった。
怖がらないで、ぼくはただ幸せになってほしいだけなんだ。どうか、どうか「 」をたすけて………
to be continued