英雄王を忘れた人間



付きまとわれている、気がする。
脳裏にちらついて離れない金糸と紅玉を携えた端正な人形のような顔立ちのアイツ。エクストラと一緒に町にいるときにたまたますれ違った男。
すれ違いざまに「今度は逃がさない」と囁かれたのを覚えている。その後、男から妙な気配がした、と、エクストラは言っていた。
もしかして、奴もサーヴァントなのだろうか。異例の9人目。ゾワリと悪寒が走る。
美しいあの男は私の何なのだろうか。今度は逃がさない。じゃあ、いつ私は彼から逃げ出したのだろう。わからない。いくら考えても彼を思い出すことはなかった。でも懐かしいような気がしないでもないのはなぜだろう。ボタンをかけちがっているような、妙な違和感。
そして、怪しいアイツとの奇妙な接触をした次の日、私はエクストラの過去を夢で見た。それなら、彼女は私の何を見たのだろうか。あの男とは知り合いだったのだな、と悲しそうな顔をしたエクストラを見てそう思った。
私と彼が知り合い。そう、なのだろうか。わからない、と首を振ればエクストラは思い出さずともよいと笑った。
思い出したら、何が起こるのだろうか。ただエクストラは奴の名はギルガメッシュというらしいぞと言っていた。ギルガメッシュ。それは最古の英雄王ではないだろうか。
じゃあ、やっぱり彼はサーヴァントなのだろう。敵が増えたなあ。衛宮くんと凛は知っているのだろうか。相談しに行こうと重い腰を上げた。





2017/01/20 19:21(執筆)
2017/01/21 16:41(加筆修正)


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