賢王と女神



マスターが食べるような金の林檎ではなく至って普通の赤い林檎を齧る王を見る。丸かじりでも様になるから本当にこのお方はお美しいのだな、と惚れ惚れする。しかし、気になることが一点あるとするならば、私が知っている時代よりも痩せた、否、窶れたように見えることだろう。そのせいか、事情を知らない人から見るとアーチャーよりもキャスターのほうが若く見えるらしい。不健康な美はよろしくないのですけれど……。

「……どうした?我に見惚れたか?」

「い、いえ。なにも…。」

私の返事に不満そうに林檎をかじる王。そういえば、この人はあのバビロニアで一度過労死しているんだったな、と思うとなんだかやるせなくなった。あの時空は特殊とはいえ、私の生きていた時代の未来である。もし私が生きていたら少しでも彼の苦労を減らせることはできたのだろうか。…いや、そう考えるもの、それはただの妄想で、実際無理な話なのだが。

「ハレク。」

「はい、なんでしょ、う!?」

「施しだ。」

我ながら変なことを考えているなと思った矢先、いきなり林檎を投げられた。うまく取れなかったらどうする気だったんだこの王様は。ありがとうございます、とお礼を述べてから林檎を口に運ぶ。甘くみずみずしい果汁と果肉が口の中を支配した。おいしい。

「美味であろう?ウルクの民が我のために作ったものだ。」

「はい、おいしいです。」

「…お前のため、でもあったものだ。」

「私の、ため。」

林檎をもう一口含めば、それはどんなものよりも美味しいと思えてしまう、といったら王はどんな顔をなさるのだろうか。まあ、言うつもりは一切ないが。先ほどの会話以降どちらも口を開くことなく黙々と林檎を食べ進める。……ああ、なんだか、この林檎しょっぱいし食べづらくなってきたな。

「王様。」

「…なんだ?」

「……この林檎、しょっぱいです。でも。おいしい、ですね。」

「……そうだな。」




術ギル持ってません!!!!!!
2017/01/22 0:24(執筆)
2017/01/23 0:50(加筆修正)

術ギル来ましたが実際の術ギルと解釈違いすぎて意味わからんので申し訳ないです。(2017/4/3)


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