周りの多くの子供たちが「将来はヒーローになりたい」と声を揃えて言う度に、わたしは毎回「なるのはいいけどわたしたちに迷惑かけないでよね」と心の中で毒づいていた。
物心つく頃にはすでに医者として人格を形成していたわたしには、ヒーローというのは煩わしい存在でしかなかった。確かにヒーローがいるおかげで救出率が上がり、医者の救助率が上がったのも事実。けれどそれと同時に「ヒーロー」でも「敵」でも「一般人」でも、等しく命を助けなければいけないわたしたちにとっては、「敵」を傷つけて病院送りにし、「ヒーローである自身」も傷つけて病院送りになり、「ヒーロー」と「敵」が戦ったことで巻き込まれた「一般人」が病院送りになるのも解せなかった。
わたしにとっては「敵」も「ヒーロー」も大して変わりはない。どちらもいらない怪我をし、わたしたち医者にかからなければならないというのに、それでも争いをやめない双方に軽く苛立ちを覚えていたのだ。更には「ヒーローは絶対的に正義だ」という風潮も気に入らなかった。
そもそも問題を起こした敵が悪いのは重々承知なうえで、そこでヒーローが力を行使して更に問題を大きくするのはいかがなものか。正義を謳うのであれば、双方が傷つかないような、もっと違う解決方法があったのではないか。
だからこそ、昨日緑谷の言った「自分を助けてくれる人がいなくても、自分の助けを必要としてる人がいるなら個性を使う」という言葉が理解できなかった。
「すみません!ヒーローオールマイトの授業の様子を…」
「急いでるんで後にしてください」
「えっ、あ…はい…」
校門前に群がるように集まっているマスメディアの取材要請を競歩並みの早歩きで躱して校舎内へと入る。まったく、みんなしてやれヒーローだやれオールマイトだ鬱陶しい。
さすがに怒りすぎ。修正する。
「昨日の戦闘訓練おつかれ。Vと成績見させてもらった。爆豪、おまえもうガキみてぇなマネするな。能力あるんだから」
「………わかってる」
「で、緑谷はまた腕ぶっ壊して一件落着か?個性の制御…いつまでも「出来ないから仕方ない」じゃ通させねぇぞ。俺は同じことを言うのが嫌いだ。それさえクリアすればやれる事は多い。焦れよ緑谷」
「っはい!」
「さてHRの本題だ、急で悪いが今日は君らに…」
(なんだ…!?また臨時テスト!?)
「学級委員長を決めてもらう」
「学校っぽいの来たー!!」
みんな挙手。
普通科なら雑務って感じでこんなことにならないと思うけど、ここヒーロー科では集団を導くっていう…トップヒーローの素地を鍛えられる役なんだ。
「静粛にしたまえ!多を牽引する責任重大な仕事だぞ…!「やりたい者」がやれるモノではないだろう!周囲からの信頼あってこそ務まる聖務…!民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら…これは投票で決めるべき事案!」
「そびえ立ってんじゃねーか!何故発案した!」
「日も浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」
「そんなん皆自分に入れらぁ!」
「だからこそ、ここで複数票を獲った者こそが真にふさわしい人間という事にならないか!?どうでしょうか先生!」
「時間内に決めりゃ何でも良いよ」寝袋に収まる
緑谷3票、八百万2票。
「僕3票ー!?」
「なんでデクに…!誰が…!」
瀬「まーおめェに入るよかわかるけどな!」
麗(爆豪くんにバレたら恐いな…)
「0票…分かってはいた!さすがに聖職といったところか…!」
八「他に入れたのね…」
砂「おまえもやりたがってたのに…何がしたいんだ飯田…」
「じゃあ委員長緑谷、副委員長八百万だ」
「うーん悔しい…」
「ママママジでマジでか…!」
「緑谷なんだかんだアツいしな!」
「八百万は講評の時のがかっこよかったし!」
ーお昼ー
ウウー!警報
《セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難してください。》
「校舎内に誰か侵入してきたってことだよ!三年間でこんなの初めてだ!君らも早く!」
危機への対応が迅速すぎて渡り廊下がパニックに。
「大丈ー夫!ただのマスコミです!なにもパニックになることはありません!大丈ー夫!ここは雄英!最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!」
「ほら、委員長始めて」
「でっでは他の委員決めを執り行って参ります!…けど、その前にいいですか!委員長はやっぱり飯田くんが良いと…思います!あんな風にかっこよく人をまとめられるんだ。僕は…飯田くんがやるのが正しいと思うよ」
切「あ!良いんじゃね!?飯田食堂で超活躍してたし!緑谷でも別に良いけどさ!」
上「非常口の標識みてぇになってたよな」
「何でも良いから早く進めろ…時間がもったいない」
「ひっ」
「委員長の指名ならば仕方あるまい!」
「任せたぜ非常口!」
「非常口飯田!しっかりやれよー!」