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「なんてことをしてくれたんだ!」
「他の家門にバレたら我が家まで…分かっているの!?」

サンジに3か月間の護衛騎士としての仕事の依頼をした後、彼は少し考えさせてくれと神妙な面持ちになった。依頼内容と報酬金の説明をし、依頼を受ける気になったらまた明日の朝に屋敷に来てほしいと告げ、一度サンジを帰した。

するとやはり街でのことがお父様とお母様の耳に入っていたようで、夕飯前に執務室へ呼び出されお叱りを受ける。この国は法律が絶対で、貴族も法律を無視すると財産や領地を差し押さえられ奪われてしまう。この国の中でも高貴な家門である我が家は罪に問われることを恐れている。

「申し訳ありません。お父様、お母様」

しかし、たかが貴族への不敬罪を行った平民3人を無罪にしたことだけで、武力・財力ともに国内トップクラスで国全体に幅を利かせている我が家に対して訴えを起こす家門もそうそう居ないはず。居たとしても、たかが財産を奪われるだけ。有り余るほどのお金がある我が家にとって、そんなに痛手ではない。この件はそこまで大きな問題にはならないだろうと踏んでいた。

「ですが、あの者の実力は本物です。国内でも類を見ないほどの武勇の実力があります」

それよりもサンジをわたしの手元に置いておく。その方が後々の利益を生むはずだ。そのことを真剣に両親に説くと、彼らは少しずつ勢いを落としていった。

「でも、平民を側仕えになんて…」
「お母様、そんなことよりも今は優先すべきことがあるはずです」

貴族社会において、平民を側で使えさせるのは異例のことなのは重々承知だ。ましてや古い考え方の両親はこの屋敷に平民出身の者が出入りしていると考えるだけで鳥肌が立つのだろう。
しかし、そうも言ってられない。目的のためには手段を択ばないことも大切なのだ。この国を守り、立て直すためにはサンジの存在がわたしに必要だ。きっと彼は”あの件”で大きな一助となる。わたしがそう言うと、両親はハッと顔を上げた。


「必ず期待に応えてみせます。”あの件”も彼の件も、わたしに一任してください。どうかお願いいたします」


わたしが頭を下げると、両親はしばらく経ってため息をついてから、小さな声で「わかった」と呟いた。











フライパンをひっくり返し、タバコの煙を吐き出しながら俺は色々と頭の中で彼女のことを考えていた。

この島にはつい昨日到着した。もう大分残りの少なくなった食材の調達に出掛けようと島へ降り立ちその辺の親父に話を聞くと、この島には大きな王国があり、全体的に王族に統治されているから王都の市場が賑わっていると聞くと、俺はその足で王都へと向かった。多くの町民は活気があるがその反面、路地裏でぐったりしている孤児や浮浪者なんかも少なからずいて、どこの国も大して変わりないんだと再確認した。
そんな中小さな少女が理不尽ともいえる目に遭い、鞭で打たれそうになるのを必死で止め、取り押さえられながら豪華絢爛な馬車から人が下りてくる気配を感じ取っていた。こんな傲慢なことをするクソ貴族はどこのどいつだ。その禿げた髭面拝んでやる、と勢いよく顔を上げると。

今まで見たどの女性より美しく、俺は天使を見たのかはたまた夢を見てるんじゃないかという気分になった。日焼けなんかとは縁がないほどの白い肌と艶のある長い栗色の髪。目はほんのり赤っぽく、その姿で着こなしているゴールドの刺繍が入った白いドレスが気品を物語っていた。こんな美しい人を目の前にして怒りなんて消え失せると、俺はその場で彼女に忠誠を誓った。

そのあと彼女の屋敷に招かれると、仕事の依頼として3か月間護衛をしてほしいと頼まれる。普段貴族からの依頼なんてクソ食らえだったが、彼女は他の貴族とは違い、国や人を思って何か大きなことを成し遂げようとしているようだった。切実さもどこかで感じ取っていた俺はすぐさま「NO」と言えず、「考える」とだけ言って彼女の屋敷を後にした。

「サンジー!!腹減った!」
「もう出来るから座って待っとけ!」

3か月なんて長期間この腹ペコ野郎どもを放置なんて出来ねぇし、貴族の問題に首を突っ込むのも憚られる。それにとっさに身分を隠したが俺はただの平民なんかじゃなく「海賊」なんだ。平民ですらあんなに虐げられる国なのに、俺が海賊なんて知られた日にゃあとんでもない大事になる。彼女…なまえちゃんにも迷惑をかけるかも知んねぇし、最悪仲間にも迷惑をかけるかも。正直この依頼は断ったほうがいいと本能が告げている…うーん、いや、でも…

「どうしたのサンジ君。食べないの?」
「ん…あぁ、ナミさん」

食事を出し、怪獣どもがガッツいている様子を見ながら考え事をしていると、様子に気付いたナミさんが声をかけてきた。流石だなぁナミさんは。よく気が付く女性だ。また心の中でナミさんを女神格化していると「なんかあったの街で」と返ってくる。…相談、してみよう。



「「「「「3か月間護衛を依頼されたぁ???」」」」」

事の詳細を語ると、やっぱり全員が訝し気な顔をした。
俺たちにとって貴族は厄介な生き物で、トラブルに巻き込まれただけでも怒られそうなのに、更に大きなトラブルを生みそうな依頼まで。そんな相談をされて頷く奴はこの船には居ないだろう。

「だめだ!サンジの飯が3か月も食えないなんて死ぬ!」
「そーだぞ、ゾロはメシマズだしナミは金取るし、碌な生活送れねぇよ」
「オイ、表に出やがれウソップ」
「失礼ね、成果報酬よわたしのは」
「……お前らメシの為だけかよ」

ここは「危ないことに巻き込まれるから」と止めてほしかったが、全員が全員「メシはどうするんだ」と口を揃える。俺は家政婦か何かか。いや、コックとして船に乗ってる以上当たり前の感想なのか、これは。

「まさか受けないわよね?その依頼」
「うーん…迷ってるんだよなァ……」

ナミさんに聞くところ、この島のログがたまるのはピッタリ3か月。期間的には問題ない。だからその間何をしようが問題はないはずなんだけど、貴族が言う専属護衛とは本当にピッタリ片時も離れず護衛することを指している。だから依頼を受けたら本当にしばらく仲間とは離れなくてはならない。そこがネックだ。

「…迷うってことは何か感じ取ったの?」

やっぱりナミさんには適わないな。自嘲するようにフッと笑いながら、なまえちゃんからの依頼を受けるかどうか迷っている理由を話した。

仲間と3か月間も離れなければならない上に、大きなトラブルに巻き込まれる可能性だってある。周りや本人にも迷惑をかけるかもしれない。そんなマイナス面ばかりな依頼なのにも拘らず、何故ここまで迷っているのか。それはひとえになまえちゃんの雰囲気が大きいと思う。

貴族であるにも関わらず、平民を思う姿。気品や優雅さは洗練されているのに、