※階段ロマンスのつづき
「名前ちゃーん!!」
「ひぃっ! 閻魔先輩っ……!」
「ひぃってヒドいなぁ!」
「あの! ていうか……!」
「なあに? ちゃんと言わなきゃダメだよ」
「離れてください」
階段での一件があってからいうもの閻魔先輩は、手段を変えてきた。教室には静かに入ってきてわたしには気づかれないようにしていて、思いっきり抱きしめてくる。しかも、なんか意地悪だ。前はそんなことしてこなかったのに最近では、全然前のあの変態さはどこへやら。(抱きしめてくるのは変態的なものではあるが)。
「だって、離したら名前ちゃん逃げちゃうでしょ?」
「当たり前です」
「だから、ぎゅーっとするの」
にぃっと笑う閻魔先輩は、意地悪だ。なんで、こうしてくるのかと問いただしたが、返ってくる答えはいつも「好きだから」の一言だけ。
「逃げないですから、先輩、離してくださいっ!」
「えーどうしよっかな?」
わたしが先輩を睨むと、冗談、冗談だよと言って離してくれた。最近の先輩はやっぱりどこかおかしいんじゃないだろうか。
不安そうに閻魔先輩を見つめる。
「名前ちゃん、どうしたの」
「閻魔先輩、最近どうしちゃったんですか」
「何が?」
「最近おかしいですよ! 抱きついてきたり、いきなり真面目な顔つきになるし、どこか遠いところを見つめていることもあって何考えているのかわかりません!」
「全部名前ちゃんが好きだからだよ」
「そんなのちっともわからないです」
ああ、これじゃあわたし駄々こねている小さい子みたいじゃないか。聞き分けのない子みたいじゃないか。でも本当に、閻魔先輩がわたしに言ってくる数々の好きって言葉がわからない。なんでわたしなの? 閻魔先輩なら他にもっと可愛い彼女とかできると思うんです。だって、先輩は黙っていればかっこいいんです。ファンの子だって、何人もいるのに……。
「俺のこと嫌い?」
「何考えてるかわからない先輩なんか、大っ嫌いですっ!」
「俺は名前ちゃんのこと、好きだよ……まあ、嫌われちゃってたら意味ないけどね」
悲しい顔して言わないでくださいよ。調子狂うじゃないですか。先輩のばか。なんで、いつもみたいに笑い飛ばしてくれないんですか。
色んな気持ちが入り混じってぐちゃぐちゃだ。
「先輩のばか」
「名前ちゃん、あんまり俺のこと馬鹿にしないでよ?今、どう思って話してると思ってるの?前に、階段で滑ったことあたよね。俺それから、名前ちゃんが危なくないようにしたし、もうあんまりいられないから色々思い出つくっていこいと思ったのに、これはないよ……もしかしたら全部俺が悪いのかもしれないけど」
「あんまりいられないって…」
「だって、卒業するし卒業したら俺県外だから」
「……もう戻ってこないんですか」
「少なくとも名前ちゃんと会うことはないんじゃない?」
さんざ人にかまってきたくせに卒業したら何もないって、先輩のほうが酷いじゃないか。
わたし、先輩にからかわれていただけなの…?
なんで、わたし悲しいの。
涙がすぅーっと、一筋流れていく。それが何回も繰り返されて止まらない。
「わたし……先輩に、から、かわれて……いただけなんですか?ちょっと変わった後輩だったからですか!?先輩との時間はなんだったんですか……」
「だって俺のこと大嫌いなんでしょ」
「本気で言ったことなんか一度もないです!」
「え……」
「べ、別に好きだからとかじゃないですからね!?」
「へー、ふーん」
にやにやしながら笑う閻魔先輩はやっぱり意地悪だ。わたし、なんでこんなに必死なんだ。本当にわたし、閻魔先輩のこと好きになっちゃったの? 嘘だ。有り得ないって。だって、こんな訳わかんない先輩……。
「名前ちゃん俺のこと実は好きだったの?」
「ち、違い……ます」
「嘘はいけないんだよ」
「嘘じゃないですっ! だってわたし先輩にときめいたことなんてないですもん」
「じゃあ、なんで顔真っ赤かなの?」
「そ、それは」
「それは?」
「暑いからで! もう、先輩意地悪ですよっ!」
「名前ちゃんからかうの楽しいんだよね〜、それに、反応がいちいち可愛い」
可愛いなんて、なんで言えるんですか。こんな可愛くない後輩他にいないですよ。
それに、きっと先輩が思うよりわたしいい子じゃないです。
卒業したらわたしには会うことはないってさっき言ったじゃないですか。今ここで中途半端にからかわないでくださいよ。
「卒業したらわたしには会うことはないって先輩言ったじゃないですか。なら、今ここで変にからかわないでください」
「名前ちゃんが、俺のこと好きって認めちゃえば、からかうのは止めるし、卒業しても会えるけど?」
「(今日の先輩は2割増しに意地悪だ)……会いたいです」
「それだけじゃあなぁ」
一つ年上だからって余裕でなんかムカつく。なんで、こういう時ばっかり先輩の顔をするんだ。…………。ああ、もう言ってしまえ! 勢いでいいや!
「閻魔先輩」
「なあに?」
「好きです」
「うん、俺も名前ちゃんのこと大好きだよ」
「だから、先輩が卒業しても会いたいです」
「会ってあげるよ」
「約束は守ってくださいよ?」
「もちろん!可愛い可愛い名前ちゃんの為だからね」
笑った閻魔先輩につられてわたしも嬉しくなった。
2011/03/16