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第1Q


1年組が勝利した事で体育館内は一気に沸き立つ。2倍以上の差をつけられていたにも拘わらず、残り3分で怒涛の追い上げをし最後の最後で逆転したのだ。1年組に負けた事を悔しく思うも、2年生は味方なら頼もしい限りだとこれからが楽しみになった。


『お疲れ』
「おー」
「お疲れ様です」


冬玖は汗をかいた額をタオルで拭きながら本日の功労者2人に声をかけた。体力がないのか結構バテている黒子に対して火神は息は上がっているもののそこまで疲れは見られない。


『あー、久々のダンクは気持ちいいな』
「ダンク出来たんだなお前」
『失礼だな、一通り出来るぞ』
「その『一通り』にはどれぐらい技が入ってんだよ」
『数えてねー』
「さっきのスリーポイント綺麗でした」


本日の部活は先程のミニゲームで終了らしく、1年は片付けを始める。スコアボードとボールの入った籠を押しながら会話をする冬玖と火神。そこに突然黒子が混ざる。火神は飛び上がった。


「お前いつの間にこっち来た!?」
「結構前からいました」
『ああ、ずっといたぞ』


ボールを集めに行っていた黒子だったがすぐ自分の仕事を終わらせ、ずっと冬玖と火神の傍にいたらしい。その事に火神は気付いていなかったようだ。それに比べ、別段驚いた素振りを見せるどころか寧ろ黒子の存在に気付いていた冬玖。そんな彼に火神と黒子は不思議そうな顔をする。


「ずっと思ってたけど、天川は黒子に驚かねーよな」
「そうですよね。全中の時もボクの事気付いてましたし…ボクが見えるんですか?」


黒子曰わく、冬玖は全中で一度帝光中と対戦をした際も自分の存在を認識していたらしい。自分が見えている上で試合をしていた、と。


『見えるのかって、そりゃ生きてるんだから見えるに決まってんだろ』
「そういう事じゃねぇよ!」
『わかってる。だがその言い方だと自分は幽霊だって言ってるようなもんだぞ』
「……そういえば」


確かに、あの言い方だとまるで幽霊宣言だ。見える、気付く、認識する。全部幽霊宣言みたいだ。だがそれ以外に言葉が見つからないのだ。それ程自分の影は、薄い。


『因みに』
「?」
『ウチのポイントガード覚えてるか?全中の時の』
「はい、天川君のパートナーの彼ですよね」
『そ。ソイツも見えてたぞ、お前の事』
「え、」
『視野が極端に広いんだよ』


冬玖は中学の時のチームメイトを思い出した。半端なくコミュニケーション能力の高い親友だ。ポイントガードをしていて広範囲を視点を変えて見渡せる能力を持っている。そんな彼と一番上手く連携が取れたのが冬玖だった。


『今は別の強豪校に通ってる』


「キセキの世代」相手にそれなりに食らい付いていたものの、結局ボロ負けしてしまった全中。中学校生活、最後の夏。


『その時の雪辱を晴らすんだと』
「……お前は行かなかったんだな」
『ああ。誘われたけどな』
「……どうして、ですか?」
『ん?色々あるんだよ、色々』


何だよそれ、などと火神が怪訝な声で言うが、冬玖はそれを聞こえなかったふりをし、すたすたとスコアボードを体育館倉庫まで押して行ったのだった。


『(今頃元気にコミュ力発揮してんだろーな…和成は)』


同じ都内だが別の高校に通う親友に思いを馳せながら。


***


その後部活が終了し、立ち寄ったファーストフード店。

そこで主役(
)
脇役(
)
が生まれ、一つの誓いが立てられたのは───


───また別の話。


*****


『ミスディレクションとんでもなかった』
『でしょー』


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