第1Q
開始早々火神の粗削りなダンクが決まる。そこから次々と点を入れて行くが、そこまでされて何の対策も立てない先輩達ではない。
「そろそろ大人しくして貰おうか!」
『(これまた奮発して来たな……)』
火神には3人、ボールを持っていない時でも2人のマークが付く。完全に火神を隔離する事でボールに触れさせる事すら出来なくさせるつもりだ。
火神を抑えられ、どんどん点差が開いて行く。気が付けば15対31とかなり離されていた。その事実に1年は戦意を喪失する。もういい。その一言を聞いた火神はキレた。
「……もういいって…何だそれオイ!!」
『落ち着け』
「落ち着いて下さい」
がしっ、コンッ
そんな音と共に、火神は冬玖にラリアット、黒子からは膝カックンをお見舞いされた。二人の勇気ある(?)行動は1年達を戦慄させる事となった。その証拠に、この一連のお陰で火神の怒りの矛先は彼らに向かう。
「テメ…ってまたか天川!!しかも今度はラリアットかよ!!脚はどうした脚は!!」
『何だ蹴りが欲しかったのか?悪いな、黒子が膝カックンの方をしたいって言ったんだよ』
「いらねェよ!!つか黒子ォ!!膝カックン結構膝にクるからやめろ!!」
「ボクの身長では火神君にラリアットは難しいので」
「何なんだテメェらは!!共謀してんのか!!」
その後も色々とモメたのだが無事火神を
沈める鎮める事に成功。そして此処からは1年組の逆襲が始まる。黒子はボールを持った福田に、冬玖は未だにおどおどしている降旗に、それぞれ話し掛けた。
「すいません、適当にパス貰えませんか」
「は?」
『降旗、焦るな。此処だと思った所でいい。自信を持って行け』
「え、?」
必ず、繋がる。
福田からパスされたボールは黒子の手に渡り───
『降旗』
「……え、…あっ」
───降旗の目の前に現れた。
突然自分に回されたパスに驚いた降旗だが、冬玖の声で我に返りしっかりとキャッチする。サッと周りを見れば近くに相手チームの先輩はいない。完全フリーだ。
「(俺はゴールから少し遠い…なら、)」
アイツだ。
降旗は確信を持った。一度そう信じてしまえば気は楽になる。安心した気持ち。安定した手元。そんな降旗から出されたパスは一直線に彼へと向かう。
「──天川!!」
バシッという音を立てて綺麗に冬玖の手に収まった降旗のパス。この試合の中では久し振りに触れたボール。彼はそのままドリブルもせずシュートモーションに入る。ぐっ、と踏み込んだそこはスリーポイントラインだ。
「……え」
「………な、」
突然通ったパスとそこから流れるように危な気なく決まったショット。何が起こったのか理解出来ず周りは騒然となる。
『ナイスパス』
「えっ、あ…うん……」
確信を持ってパスをしたがあまり実感がないのか、ぽかーん、と降旗は呆けている。そんな彼の肩を軽く叩き、冬玖は降旗に声をかけた。
『ちゃんと繋がっただろ?』
「……うん」
『だから自信持て』
「……わかった」
彼の目は、もう怯えていなかった。
そこからの2分は、各々が自分の能力を発揮しながらの試合となった。前半のように火神が一人突っ走るのではなく、黒子が自分の体質(?)を利用した視線誘導……ミスディレクションを駆使し、ボールを味方に運ぶパスの中継役としての援護を交え、冬玖がシューティングガードの役割であるポイントガードの補佐を果たしつつドライブやフェイダウェイで相手を躱し、ショット。センターは福田だけでは経験の差等の点で厳しい部分もあるので、そこは火神が持ち前のジャンプ力とパワーでカバーする。
短時間の中で彼らは着実に成長していた。それはスキル云々ではない。チームの団結力だ。
カントクは元帝光中レギュラーでパス回しに特化した見えない選手……「キセキの世代」幻の6人目の存在に驚くと同時に、前半の試合から一転したこの1年組の様子の異様さに圧倒された。
「(さっきの今で『チーム』が出来上がってる……)」
あまりにバラバラなピースだったのに、どんな紆余曲折があって一つに繋がると言うのか。何があったのかなど誰にもわからない。それは、見事な「チーム」を造り出した彼らにもだ。
「あッ!!」
黒子のパスに気をとられ過ぎた2年組は、それまで隔離させていた火神にボールを渡らせてしまった。火神のショットはゴールを潜り、1年と2年の点差は1点となる。黒子というパスの中継役の存在はかなり大きかったのだ。
「っち!!」
「バッ……」
舌打ちをしながら回されたパス。その安直さに気付いた時にはもう遅く、ボールは黒子にカットされる。黒子はそのままドリブルでゴールまで走った。
「行けぇ、黒子!!」
完全なフリー状態でのレイアップ。1年組は勝利を確信し───
「勝っ……」
ガボン...
───たのはいいが思いっ切り外れた。
何でだよ。何でそこで外すんだよ。
ドフリーだったじゃん。
残念そうな周りの顔を余所に、ゴール前まで走って来た二人は黒子の後ろで踏み込む。
「……だから弱ぇ奴はムカツクんだよ」
『そこ外したら駄目だろ……』
リングに弾かれて浮いたボールを、冬玖と火神の大きな手が掴んだ。
『ちゃんと、』
「決めろタコ!!!」
ガンッと凄まじい音が鳴り、黒子の頭上で二人のダンクは綺麗に決まったのだった。
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