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出会い


『…………ぁ、?』


目を開けた。白いものが目に入った。
首を動かした。思ったように動かない。
右を見た。窓がある。外は快晴だ。
左を見た。サイドテーブルがある。花瓶が乗っている。
起き上がった。やはり思ったように動かず、おまけに関節がバキバキと悲鳴を上げた。

顔には人工呼吸器。腕には点滴の管。真っ白な天井、壁、床、ベッド……此処にあるものほとんどだ。


『………病院、か……?』


少しの間思案した結果、銀色の髪の少年はそう判断した。発した声は掠れ、喉が痛む。先程から動かし辛い身体から察するに、自分は長い事眠っていたようだ。重たい腕を持ち上げ、ナースコールを押す。それだけで疲労を感じ、少年はベッドに沈んだ。


*****


まさか目を覚ますとは、あんな大怪我をどうやって、完治している。医者のそんな言葉を軽くスルーし、銀髪の少年は治療費は如何程か問う。質問に答えない彼に複雑な顔をしながら医者はカルテを見、口を開く。告げられた金額に少年は額に手を当てた……とても手持ちの金で支払える額ではない。そりゃそうだ。それなりに長い間入院していたのだから。手持ちがないと言い辛そうに伝えると、医者も額に手を当てた。揃いも揃って困り顔である……少年の方はあまり顔には出ない質なのか無表情であるが。

少年は申し訳なさそうに(顔には出ていない。そんな雰囲気だ)金の納入を少し待っては貰えないかと訊ねた。必ず、全額、支払うから、と。金額が金額な為、医者は渋った。しかし、それを却下したところで他に案は浮かばない。病院の手伝いにしても素人にやらせる事は何もない上、あったとしてもその分の賃金は微々たるものになるだろう。返済までどれぐらいかかるか。それならば定期的に治療費を此方に振り込んで貰った方が確実である。その分、踏み倒される危険も高いが。

渋々医者はその申し出にOKを出し、必ず返済する旨を記載させ(見た目に反して丁寧な文、綺麗な字だった)、血判を捺させ(大怪我をした相手に指を切らせるのは心苦しかったが彼は平気でそれを行った)、それを念書として此方で保管する事に。完済したら念書は破棄すると伝え、医者は少年の退院を祝った。融通の効く者であった事に安堵しながら彼は感謝を告げ、荷物を纏めて病院を去る。体力の落ちた身体に顔をしかめ、まずはコンディションを元通りにしなければと心中で決意した彼は、身体を鍛え直すべく山へと向かったのだった。

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