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退院してから幾日か経った。山で野生児のような生活をしているうちに、鈍った身体は以前とほぼ変わらない程度まで感覚を取り戻した。眠っていたのは時間にして2ヶ月程だったらしいが、それを数日で挽回出来るような身体の構造であった事に感謝をし、少年は再び荷物を纏め街へおりる。治療費返済の為、働き口を見付けなければならないのだ。見付ける、とは言っても、彼は既にその目途が付いていた。今からその「目途」に向かう。
山を下り、街を抜け、駅に着いた。少年は路線図を確認し、切符を買う。行き先は少し遠いので路銀の半分が消えたが、もう戻って来る事はないし(治療費の支払いは郵便でも出来る)、宿も二泊ぐらいならとる事が出来る。その二泊の間にそれなりに稼げば問題はないのだ。
列車が来るまであと数分。少年は荷物の入ったメッセンジャーバッグの中から小瓶を取り出した。中に入っている金平糖程の大きさの粒を一つ、口の中に入れ飲み込む。小瓶をバッグに仕舞い背負い直したところで、列車が到着。これから少々長旅になるだろう。少年は溜め息を吐いた。
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列車に揺られてどれぐらいか。出発してから幾つ目かは忘れたが駅に着いた。田舎のようで乗車する者はいない、と思いきや、発車する直前で乗り込んで来た。若い男女数人で、少々……否、かなり騒がしい。列車が動き出した瞬間、バターン!という音が近くで聞こえ、更に騒がしくなった。聴覚に優れている少年が彼らの叫び声を聞き分けてみると、どうやら仲間のうち一人が倒れたようで。先程のバターン!はそれかと思いつつ、少年は個室のドアを開けた。
「もー!しっかりしなさいよ!!」
「お前ホンット面倒くせーわ」
「どうしたものか……」
自分の個室からそう離れていない廊下で、金髪の少女が床で倒れている桜色の髪をした少年を引き摺っている。その横で、少年に向かって悪態を吐く青年(何故か半裸)とやれやれと溜め息を吐く女性(此方は甲冑)がいた。何だこのカオス、と思わず半目になってしまったが、そのカオスな状況を見付けてしまったのは自分である。少年は取り敢えず声をかけてみる事にした。
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