ビーコンたちが仕事のために動き回る音と、なにかやらかしたのだろうスタースクリームの悲鳴がかすかに響く、そんないつものネメシス内。
いつも通りにサウンドウェーブがいる管制室を訪れたユウは、困惑した表情で目の前の部屋の主の顔…正確にはバイザーを見つめていた。
見つめられている巨大な顔…もといサウンドウェーブもまた、ユウを見つめ返していた。目線が分からないため、見つめるというよりは顔をむけると言ったほうが正しいだろうか。
ここだけなら、別に何の変哲もない、普通の場面だが、この状態はもうかれこれ一時間近く続いている。
逸らそうとすればすぐにケーブルが向けられて顔の位置を戻されてしまうからこうして見つめあう形になっているのだが。
楽な体制で持ち上げられているので別につらくはないが、いかんせん居心地が悪い。
「あー…。サウンドウェーブ?」
ついに、居心地の悪さに耐え切れず、ユウは口を開いた。…が、サウンドウェーブからは何も返ってこない。
延ばされたケーブルが絶妙な力加減でするりと頬をなでただけだ。
(…困った。)
サウンドウェーブが何をしたいのか、まったくわからない。
せめてなにか返してくれたら多少は分かるかもしれないが(あくまで”かもしれない”である)、だんまりを決められてはお手上げである。
「サウンドウェーブ。何かあったの?私はあなたのドローンでもないから、言ってくれないと分からないよ。」
人間目線で見ても細く感じるサウンドウェーブの指に軽くふれながら、そう言ってみれば、ぐっと顔を近づけられた。
顔のほとんどを覆うバイザーの中央には右を向いた三角形。
所謂再生ボタンである。
何の気なしにそれに触れると、若干のノイズと共に、聞き覚えのある音声が流された。
”なぁ。”
”んー、何?スタースクリーム。”
”お前の顔の好みってどんなの?”
”えー?私の好み?…そうだねぇ、この前見た映画の俳優さんとかなかなか…。”
”そうじゃなくってさ。俺様たちの中じゃどれが好みなんだ?”
”…確実に面白がって聞いてるよね、スタースクリーム。まあいいけどさ。う〜ん…。ノックアウト、は単純に綺麗な顔してると思う。あ、メガトロン様のお顔はかっこいいと思う!”
”げ、ノックアウトはともかくお前あんなのが好みなのかよ。”
”失礼だね、スタースクリームが最初に聞いてきたんじゃない…”
そこでプツ、と音声が途切れた。再び管制室の中を静寂が包む。
「…サウンドウェーブ。」
ここまで来れば、さすがに理解出来る。
というか、顔の好みと言ってもサウンドウェーブの素顔なんて見たことがないので判断のしようがない。もともとフェイスパーツがないのか、それともただ単にバイザーで隠しているだけなのだろうか、それはユウにだって分からない。だが、それでもこれだけは確かだ。
「あのね、確かにメガトロン様のお顔は好みだと言ったけどね、それでも、好きなのはサウンドウェーブなんだよ。こうやって、私が怪我をしないように力加減して持ち上げてくれる優しいところも、トラブルが起きても冷静に対処できるかっこいいところも、ちょっとストーカー気味なところも、全部ひっくるめてサウンドウェーブが一番好きなんだよ。」
我ながら、なんて大胆な告白だろうか。
熱くなっているだろう頬をごまかすようにそんなことを考えてみる。
「…………。」
相変わらず、サウンドウェーブからの返事は返ってこなかったが、そっとこちらに顔(バイザー?)をすり寄せてくるところを見るに、機嫌はなおったようだ。
すり寄せられるバイザーがほんの少し、いつもより熱を持っているのに気が付いたユウは、両手をつくと、人間でいう頬に当たるであろう部分にキスを落としてやった。
(大胆な告白とキスをしてもらえたけれど、それでもスタースクリームの“あんなの”発言はメガトロン様にチクる。)