そして灰になる




強い心を持ちたかった。

海兵を志す者はみな等しく高みを目指す。
私も同じだった。もう二度とこの手から大切なものを零し落とすことがないように、強くなりたかった。

彼がいたから命を喜んだ。彼となら立派に育てられると思った。支えをなくした私はただの無力な小娘だった。
かわいかった。どうしようもなく。愛おしいからこそ触れられなかった。

真っ白に褪め、痩せ細った我が子。まるで虫のようだった。骨の形がはっきりと浮き上がり、皺くちゃな顔はまるで老人のようにも見えた。

脳髄にまで響き渡る声が、私を責め立てているようだった。
子どもたちが生きていると感じること全て、生きていると喜ぶこと全てが私をおかしくした。

あの子を何度も夢に見た。眠るのが怖くなった。生きるのが怖くなった。
たったひとつの冷えきった小さな塊が、私の一生に付きまとう。


そして私は、命を紡げない身体になることを選んだ。



「……本当に………馬鹿だったよなぁ……私も、あんたも。」


薄闇の牢を過ごすあの人は、どんな景色を見たのだろう。世界を彩られることのないまま生まれてすぐに死んだあの子の、何億倍の色を見たのだろうか。



腐り落ちそうだった私を、スモーカーが引き上げてくれた。
彼が負い目を感じて私を引き取ってくれたことは知っている。
計れない恩を受けた。それに報いたいと思うのに、私はこの腹の傷を見る度に、そこから臓腑を引きずり出し、何も残らないようになれと思ってしまう。
だがそれでいいのだ。この傷は罪の象徴、これから先ずっとこの身を苛むためだけにあるあの子の怨恨。


馬鹿な私はこの傷が存在して初めて人間になれるのだ。